じょんのびテーブル
W1900×D1100×H700
材質:栗、タモ
塗装:天然オイル、ワックス
※椅子は付属していません。
ストーリー
和歌山県有田郡にある、ログハウスのレストラン、「じょんのび」はその街の小高い丘の上に建っていた。
そこの御主人は大工でもあり、前にデスクとチェアを納品した雨滴さんの家をリフォームした方だった。
僕が作った家具を見て、奥さん共々気にいってくださり、奥さんがきりもりするレストランにテーブルを作って欲しいと頼まれた。
打ち合わせでじょんのびにおじゃますると、御主人が建てたというログハウスはとても立派で、中に入って見てもすごく雰囲気のいい空間だった。
広々とした室内に薪ストーブがあり、4人がけのテーブルが2台と、ローテーブル1台、ソファーが並べられている。
しかし、テーブルの1台は家庭用のダイニングテーブルであり、ずっとここにあうものを探していたのだという。
確かに、入り口から入ってすぐ目の前のテーブルにはお客さんは座らず、奥まったところのストーブの前のソファーにみんな足が向くようだ。
そこから奥さんが調理などをしているカウンターは、空間の対角で反対側にあたる。
つまり、僕が作るテーブルは、その店の中央に置かれ、その店の顔になり、入って来るお客さんを最初に迎える場所となるようだった。
だとすればもちろん、この空間に、雰囲気にぴったりくるものでなくてはならない。
僕はいろんな角度から室内を眺めていた。
すると、奥さんが、
「お昼まだでしょう。パスタとごはんどっちがいいですか?」
と、僕に食事をすすめてくれた。
僕はありがたく、パスタをお願いした。
席に着くと、音楽が流れていることに気付いた。ちょうど邪魔にならない音量で、ゆったりとした音楽が流れている。
出されたおしぼりからは、何かいい香りがした。
奥さんが作ってくれたのは、醤油とバター風味の和風パスタだった。家庭的でとてもやさしい味がした。
食後においしいコーヒーも入れてくれた。
店の雰囲気はもちろんだが、料理や器の趣味、奥さんの人柄を反映させなければ、と思った。
ここに来るまでは、モダンで僕のカラーを出したデザインをイメージしていたのだが、そうではないと感じはじめていた。
重々しいものでもいけないが、やさしく、あったかく、やわらかく、かろやかな、そして、御主人の建てたこのログハウスに似合うもの。
僕は初めて、耳付きの天板のテーブルを作ることにした。
しかし、厚みを40にし、見た目の重さを軽減させ、脚はすかっと角柱にし、薄い幕板をまわした。
材質は栗。
栗は木目がはっきりしているが、タモより硬く、磨きあげるとつるっと仕上がる。
含まれる渋や油で変化していく色合いも楽しめる。脚は予算的にタモにしたが、木目が似ているのでいいと思う。
材木屋で木を見た時に、手作業で削りたくなり、プレーナーをかけてもらわなかった。
時間がかかってしまったが、そうする意味はあったと思う。
簡単に、早く安く仕上がる家具が欲しい人は、そういう家具屋を探せばいいと思う。僕は数字になおせないものが、家具には重要だと思っている。
そのぶん、お待たせしてしまったのだが。
納品し、後日御主人から掲示板にお便りが書き込まれた。
「…一夜明けた次の朝、何だかぴったりとマッチしてしまったテーブル。色も少し濃くなった様な、家が建った時からそこに居たような、そんなテーブルを有り難うございました。
又、このテーブルからいろんな物語が生まれていくことでしょう。」
うれしい、僕もそう願っています。