ローテーブル・akane
W1000×D600×H330
材質:チェリー
塗装:オイル、ワックス
ベンチ・tetsuo
W760×D300×H500
材質:チェリー
塗装:オイル、ワックス
ストーリー
僕が教員をしていたころの教え子が結婚し、新居を構えた。
久しく「先生」と呼ばれていなかったので、電話口でそう呼ばれると、少し照れくさかった。
新居に置く家具をいろいろ頼みたいという。
注文してもらえるのはありがたいが、教え子から金をとるのは少し気がひける。
それでも商売だからと自分に言い聞かせ、見積書を送った。
いろいろ頼まれた中で、まず作りはじめたのはローテーブルだった。
一番彼等の想いが強そうだったからだ。
リビングのソファーの前に置くテーブルで、サイズは小振りだが、デザインに関する注文があった。
「角のないのがいい」
いずれ生まれてくる子供のために、ぶつけても痛くないようにと。
それなら柔らかくてあったかいチェリーにしよう。
変化していく色あいも楽しめる。
デザインは母となる彼女をイメージした。
また、同じチェリーで玄関用ベンチも作ることにした。ローテーブルと対にしたかったのだ。
しかし、なかなかデザインが決まらない。
そんなとき、彼等が工場に遊びに来ると言ってきた。
それなら、いっそ彼等に好きなようにさせてみよう。
そう思い、僕は座面と背の角度と、内側のアールの削り込みだけをした。これだけで座り心地は決まる。
あとの形は二人にもできるよう、ほぼ一体型のベンチにした。
しかし、結局ほとんど作業をしたのは、旦那のほうであった。
あかねは根気のいる作業は苦手のようだ。
でもそれが逆によかったのだと、ベンチが出来上がって思った。
この素朴な雰囲気のフォルム。
まさに旦那のイメージだったのだ。
無口で、やさしそうで、のんびりした感じ、しかし体格はがっしりしていて力強い。
ローテーブルと対にした意味が生まれた。
こういう方法もあるのだと思った。
僕が考えるオーダーメイドなら、つじつまがあう方法だ。
作り手が意図的に注文者に手を入れさせる。
これからも機会があれば使ってみたい。