モンゴルの角・ショーケース
W230×D120×H315
材質:ブラックウォルナット
ポリ合板、アクリル
塗装:天然オイル、ワックス
ストーリー
ひとつの価値観をお互いに共有するもの同志は、多くを語らなくても簡単に相手を理解することができる。
何が言いたいのか、何を求めているのか、何をすれば響くのか。
オーダーメイドでものを作る場合、相手をどのように理解するかで出来上がってくるものは違う。
僕はいつも、紙と鉛筆とに向かう前に、その細い糸をたぐるような作業から始める。
このショーケースを注文してくれたのは、カメラマンの松野氏だった。
松野氏にはこのサイトで僕の家具の写真をいくつか撮影してもらっている。
光の難しい屋内での写真を、いつも無理を聞いてもらっている。
信頼できる男なのだ。
松野氏は無類のバイク好きなのである。
僕も高校生の頃からバイクに乗っているが、未だに降りられない人間の一人だ。
年に数回、二人で走りに行くことがある。
バイクの事と写真の事を話し出すと止まらない二人だから、端で聞いてるものはえらい迷惑なんだろう。
そんなことには構わずに、僕らはその話題で興奮しきっているのだから。
そして旅やバイクの話においては、僕らは子供のように夢を語れる。
それが実現不可能でも、可能であるように思え、その手段を何千通りだって考えることができる。
バイクに乗るということは、そういった思考回路を与えてくれるのだ。
それを共有できる相手だったから、今回の答えは簡単に導き出せた。
松野氏がモンゴルを旅した時に手に入れたヤギの角。
まさしく写真の素材を見る目で選ばれた、この風変わりなお土産を、飾っておくためのショーケースを作って欲しいという。
答えはいたって簡単。
シンプルな箱で良い。
装飾などいらない。つまり写真をおさめるフレームと同じで、箱自体に主張はいらない。
無駄があってはいけない。
これは、立体的に見るスティルライフフォトなのだ。
しかし、立体であるがゆえに、箱自体の質感も考えなければならなかった。
また、実物が入っているのだから、扉が開いて触れる、という機能も付け足した。
この箱が、平面で勝負する松野氏を刺激してくれればいいが。