あなたと、あなたをとりまく環境を
肖像画を描くように、一つの家具で 描き出す作業
それが、僕が考える オーダーメイド家具の製作です
SIGNのポリシー、オーダーメイド家具の魅力
「SIGNの写真茶話会」早口言葉3回言ってみて
2009 年 1 月 18 日 by SIGN
何をやってるんだと思われるかもしれませんが、いろいろあって写真教室をSIGNでやることになりました。
うだうだ言ってた割には、こんなにも早く実行するとは、意志が弱いと言うかなんというか。
それでもやる限りは本気でやります。現実的には難しいかもしれませんが、気持ちは全開です。
写真によってみなさんの生活が少しでも豊かになれば、そのお手伝いができればと思ってます。決してスターを育てようなどという野望はありませんので、気軽に御参加下さい。
「教室のご案内」にもこの茶話会を追加しました。
第一回目は2月7日(土) 13時から17時まで
今回の内容は「基礎からスタート」です。一眼レフ初心者の方、基礎を知らずにもうガンガン撮っている方、実は技術をちゃんと知ると写真は格段にうまくなるし、面白くなります。興味のあることは聞くだけでも楽しいと思いますよ。
それができたら、必ずもっと深いところへお連れします。お約束します。
参加希望はメールにてお知らせ下さい。sign.norioyuasa@gmail.com
積み木セット7セット
2009 年 1 月 17 日 by SIGN
知人から頼まれて、積み木のセットを作った。端材でいいからと言われて作ったものの、指定された規格の揃った積み木を作るのは端材ではやりにくく、意外と時間がかかった。
こういうものでさえ、いや、子どもが触れるということを考えればこういうものこそ、やはり考え抜く必要があるような気がする。
大人が与えようとするもの、子どもが必要とするもの、その関係は大人が主体であってはならない。
それを作る人間である以上、僕にも責任がある。
それを知って無視することはできないこと
2009 年 1 月 12 日 by SIGN
先日大阪で行われた、映画「闇の子供たち」の上映と講演に行ってきた。
プロップスフェスティバルで毎年、カンボジアでNGOとして活動している栗本英世さんの支援をしている関係上、実際の話をあらかじめ聞いていたことと、その流れで原作の小説を読んでいたので、映画の内容はだいたい予想はしていたものの、やはり映像で見せられる衝撃というのはある。
もちろん、劇場で公開される映画であるため、描ききれない部分はあるとしても、このテーマに挑んだ阪本順治監督の製作にかける想いは十分伝わってきた。ほんとになんという映画だろう。同じ一本の映画の中の時間に対して、こんなにも考え抜かなければできないということ、その心構えがどんな映画にも勝るような気がする。
人の犯した罪と、どこにも逃げ場がなく、救いもなく、誰もどうしようもなく良い人間が存在しない世界。その上に僕らの住む社会が乗っかっているという事実。
それを知ったとして、いったいどうすればいいのか分からなくなってしまう現実がそこにはある。
阪本監督も言っていたが、知ってしまった以上作ることしかできない映画だったのだろう。事実を伝えるために映像はあり、そしてそのテーマに対する阪本監督の想いが編集に刻み込まれた作品だと感じた。
そして、上映後の栗本さんの講演もまた、救いようのないものをなんとか救おうとしてこられた軌跡を語るものだった。
そういった事実、この世界と、僕は木工家としてどのように関わっていけるのか。認められたい、売れたい、ばっかりのこの世界で、いったい何ができるのか。
そんなことも、やはり知ってしまった以上考えながら作っていかなければならないだろう。
そうでなければ、自分を疑ってしまう。
一日いろんな刃物を研いでいたら
2009 年 1 月 8 日 by SIGN
新年の仕事始めで、工場のメンテナンスをやっている。本当は年末にしたかったのだが、結局時間がなく、大掃除だけして、作業は年明けに持ち越したのだ。
いざ始めると自分でも信じられないくらい道具が増えている。いったいいくつあるのだろうか。木工機械、電動工具、手道具やこれ道具?というのまで含めたら100個は軽く越えていそうな感じである。
そんなに道具が必要なのか、と思うが、ひとつひとつ見ればどれも使わないものはなく、ちゃんと使いこなしているのだから不思議だ。無けりゃ無いでなんとかなるようなものもあるのだが、やっぱりここはこれでなきゃ、みたいのがあって、それがたまってこの数になっている。
それでもまだ欲しい機械とかあるんだから困ったもんだ。師匠や先輩もよく言ってた。道具は増え続ける、道具のために仕事してるみたいだって。
しかし基本は手道具であって、本来はそれだけで作業ができてこそ職人であり、そうでなければどんな便利な道具も応用が利かない。特に刃物は自分で研ぎながら使うので、使い方以前にその道具の構造やメンテナンスも学ばなければならない。訓練校では最初の3か月はずっと刃物研ぎだった。
と、言いつつも、いざ仕事を始めると、そんなに研いでばかりはいられない。いくらか使ってからまとめて研ぐことが多いが、こういう機会にチェックすると、使いっぱなしで一年くらい研いでないものも出てきた。
一日いろんな刃物を研ぎっぱなしで上半身筋肉痛で、仕上げに鉋台もびしっと調整して、これが結構満足感がある。電動工具が増えても、やっぱり手道具には愛情を感じてしまう。
訓練校で学んだ者は、こんなところでにやりと笑うのだ。
「松本家の玄関コンソール」をアップしました
2009 年 1 月 6 日 by SIGN
作品一覧/リビングカテゴリーに「松本家の玄関コンソール」をアップしました。
新年おめでとうございます、ですが訳あって去年の記事
2009 年 1 月 5 日 by SIGN
年末、パソコンのハードディスクが故障し、まったく起動しなくなった。慌てて修理を依頼したのだが、結局データは復旧できず、ハードディスクの交換をしてなんとかパソコンは使えるようになったものの、ソフトのインストールや再設定などで時間が取られ、やっとこの記事がアップできた、というわけ。
ここをいつも見てくださっているみなさま、新年あけましておめでとうございます。
今年はちょっといろいろ考えています。自分に設けた様々な壁を取り払い、SIGNは新たなスタンスでの活動を始めたいと考えています。その詳細はその折々にお知らせしていきたいと思いますので、どうぞこれからも末永く見守っていてください。もしくはご一緒にいかが。
では本題。
去年のクリスマスの日に、近所に住む小学生の姉妹から頼まれていた彼女たちの愛犬の犬小屋を、木工教室として一緒に作った。
以前このブログでその話をした後、知り合いの材木屋さんから杉材をたくさんもらい、それで作ろうと決めていた。彼女たちの描いたスケッチの中から、デザインはテレビをモデルにしたものに決定していたので、ほぼ箱。薄めの板材を製材しはぎ合わせて彼女たちを待っていた。
寸法切りをしておいたので、あとは組み立てて磨いて、という作業なのだが、小学生で女の子だからこちらも慎重になり、教えながらだと1日目でここまでしかできなかった。
そして難しいのは、彼女たちの反応をなかなか掴めないこと。親から何か言われてるのか、彼女達同士もあまりしゃべらないし、こちらを警戒してる風でもないんだけど、なかなか近付いてこなかった。
まったくの初対面か、学校だと多分もっと打ち解けられる自信はあるんだけど、ご近所付き合いという微妙な距離感が、彼女たちにとってもどうしていいかわからない関係だったのかもしれない。
2日目。
といいつつも、作業しているときは楽しそうで、二人で順番を決めて、次あたし、ここはお姉ちゃん、とかいいながら夢中で、初めて触れる道具や出来上がっていくテレビを見ては小さな歓声をあげていた。
そして、どうですか!このかわいさ。なんでピースマークなんだ!
仕上げはやっぱり小学生らしいところはあるが、それが良くて。
こんな犬小屋に住める愛犬くんは幸せだな。
こんな仕事で2008年仕事納めができたのも幸せです。
クリスマスプレゼント
2008 年 12 月 24 日 by SIGN
昨日出来上がったミニカホンを今朝発送した。別にこの日を狙っていたわけではないが、クリスマスの朝に届くことになりそうだ。そして、昨日はその依頼者の方の誕生日でもあったらしく、そういう偶然は重なるものなんだな。
予定をきっちり立てて作ることもあるが、そうでない場合、なぜかあるべき場所にぴたっとおさまることが多い。その方がいいなら、いっそ予定なんて立てなければと、いや、待たせ過ぎには注意だな。お待たせして申し訳ありません、は依頼者に連絡する時の、お決まりの第一声となってしまっているのは良くない。
今日は堤さんとこからの仕事を1日でやっつけ、力技で納品。
そして明日は、あの「浄化姉妹」のための木工教室だ。彼女たちの予定と、僕の仕事の予定がかみあわず、こんなにものびのびになってしまったが、彼女たちの愛犬のためのクリスマスプレゼントになる素敵な犬小屋にしてあげよう。
年末の追い込み、仕事その一
2008 年 12 月 23 日 by SIGN
東京の新橋にある多目的スペース(ギャラリー、セミナー、会議室など)「オフィス銀の鈴」様からご注文頂き、ミニカホンを作らせていただいた。人が集まった時に気軽に楽しめる楽器ということで、SIGNのミニカホンを選ばれたらしい。
塗装は無着色でトップをスプルースとブナのソフトをそれぞれ張り、中には鈴を取り付けた。お名前からして、この鈴はポイントなのだろう。ほかにも「鈴」に関するいろいろなものが置いてあるのかな、と想像したりする。
そんな作業をしながら、例のコンソールの納品待ち展示会に、ぱらぱらと人が訪れる。といっても結局いつもの知り合いが来てくれただけだったが、初めということもあるし、こういったことは継続していかなければならないのだろう。特に宣伝するわけでもないし、見たいという人とのタイミングがあるわけだし。
一番に来てくれたのは、風草木の森川くん。二回も訪ねてくれたのに、やってるほうもいい加減で、一回目は買い出しで外出していたので会えなかった。で、今日改めて来てくれたのだ。
寒い中屋外で仕事をする彼は、もはや雪国かという出で立ちだった。薪ストーブに廃材をぶち込みコーヒーを入れて、家具の話はそこそこに、植物の話や写真の話をした。その中で興味深かったのは、植物の体温の話。面白いのでこれは何かの機会に使わせていただこう。
彼の植物話にはいつも、ただの知識欲を満たすだけの情報ではなく、なにかこういう心に触れてくる情感がこもっているので面白い。お互いじじいになったら近所に住んで、日がなこんな話をして過ごすというのもいいかもね。
そして昨日は理想建築工舎CRAFTの堤さん。外回りのついでと言いながら、2時間滞在。作品も見てくれたけど、話の内容はそれよりも、僕の仕事のやり方への指摘満載の、はたから見れば小言のような助言のような、知ってる人から見れば漫才のような、男話だった。
こっちは新境地か、と今回思ったサンディングに関しても、おもろいけどアホ、という言いぐさで、僕の商売下手にもいろいろ意見があるようだけど、言われれば言われるほど、まあ見てて下さいよ、と元気が出てくる。そういう仲なのだ。
と、今のところ仕事の邪魔にしかなっていない展示会、なのであった。
一品だけの納品待ち展示会「松本家のコンソール」
2008 年 12 月 18 日 by SIGN
11月末からかかっていた、玄関コンソールが今日完成した。なかなか続けて作業ができず時間がかかってしまったが、コンソールとしてはほかにちょっとないものができたと思う。形はシンプルだが、コンセプトが細かいディテールに反映しているSIGNらしい家具になった。
この作品についての詳しいことはまたコンテンツの方で紹介するとして、昨日言っていた「一品だけの納品待ち展示会」を開催(?)することにした。
完成の報告を依頼者にしたところ、昨日のブログ記事を御覧になっていて、それをするなら納品を待ちます、というなんともありがたい協力的なお返事。ほんとはこっちが待っている間の企画なのに。そう、待ち時間がなければ不可能なことで。これからもお客さんのご理解とチャンスがあれば続けていきたいと思っている。
『というわけで、この作品の納品は12月26日になりましたので、それまでに、オーダーメイド家具を検討されている方、SIGNの家具を一度見てみたいと思っていた方、どうぞSIGNへおこしください。』
あ、土曜日はいません。
コンソールいよいよ明日完成、か
2008 年 12 月 17 日 by SIGN
とにかく手作業にこだわった脚部の仕上げ磨きをした。これはもちろん紙ヤスリを使い、段階を重ねて番手を上げていく。
紙ヤスリの作業は手の形や持ち方を変えながら、磨く部分に合わせて丸めたりのばしたり折り畳んだりして、紙一枚がいろんな道具に変化するので面白い。
訓練校時代、いろんな技術を学ぶ中で、なんと僕が一番ハマったのがこれだった。同じクラスの友達は鉋やノミや、それを研ぐ砥石の話題で盛り上がっている時に、ヤスリがけにハマっていた僕は当然彼等に笑われていたけど、仕事でちゃんと役立っているのだから、これでいいではないか。なんて言うとまた湯浅らしいと笑われるかもしれないが。
しかし、本体よりも時間がかかってしまった脚部を作りながら思った。ひょっとしたら、これが僕のスタイルを導く鍵ではないのかと。
摩擦系作業によるカービング、アリだなこれは。
ゴシゴシしながら今日考えていたのだけど、SIGNにはショールームやギャラリーがない。時々、実物を見たいという問い合わせもあるが、作品のほとんどはオーダーメイドで、納品すると手もとになくなってしまう。こないだも、ストックはないんです、と言ったとたん電話を切られたこともあった。
個展をする余裕はまだないので、こういうのはどうだろう。
ひとつ仕事が完了し、納品待ちの間は手もとにあって、今までにも知り合いとかには連絡して見てもらうことがあった。
これを恒例のものにして公開してはどうか。一品だけの納品待ち展示会「ごらんいただけますよ」(仮)
もちろん、完成してすぐ納品ということもあるが、もし数日でも待ち時間があるなら、ケースバイケースというどきどき感もあったりして、面白いかも。
ブログで情報を流すだけで、見にくる人なんていないかもしれないし、案外どきどきしてるのは僕だけなのかもしれないけど。
楽しいと言いながら、ヤスリがけが終わらない。
ちょっとくらい鉋や、グラインダー使えばよかったかな。
慣れないということもあって遅いのか。
しかし今回前半で活躍したのがこの「のこヤスリ」。ホームセンターで1,000円くらいで売っているこのヤスリ、使っている人も多いのではないだろうか。なかなか使える道具だ。
目詰まりしないので作業は快適だし、幅が広くて平面が出やすいのも利点。普通の木工用の平ヤスリや半丸にくらべると、厚みがあるので使える用途は限定されるが、一応荒と仕上げが使い分けできてお得。耐久性もある。
目詰まりしないを売りにする高価な高性能ヤスリもいいが、これでいいじゃん的発想ができる人は天才だと思う。
でも欲を言うと、僕の技術をカバーする、もっと早くてきれいに仕上がるヤスリはないものかと思う。
3日目となると、やっぱり結構しんどい。
今日の作業は一日サンディングだった。
サンディングというと、日本語的にはいわゆるペーパーがけか、普通はオービタルサンダーやランダムサンダー、もしくはディスクグラインダーなどの電動工具を使用した磨き工程を指す言葉だが、西洋においては「磨く」だけではなく、「削る」ことも含めた成形工程もサンディングらしい。もちろんそれには紙ヤスリも電動工具も使うのだが、木工の技法という意味合いでのサンディングとは、木工ヤスリを使った手作業による成形のことをそう呼ぶ、というのを本で読んだことがある。
曲面の加工やテーパー処理なんかは、特に日本人は刃物を使って成形するのを美徳とするところがある。鉋、小刀、ノミなどなどを駆使して、木繊維と格闘するのだ。それに対し西洋では、ためらいなくヤスリでごりごりやりはじめ、だんだん細かくしていって、最後にはぴかぴかに磨きあげる。もちろん仕上がりや表面の耐久性を比較すると、鉋などの刃物で仕上げた方が美しくて強いのだが、現代の塗装法を考えると結局最後は素地調整をしなければならず、100分の1ミリの差を気にしなければ、最初からヤスリ、はむしろ合理的なのかも。
しかし、こんなに電動工具が普及し種類も充実している時代に、どちらも手作業で、好んでそれらを選ぶ人はやっぱり職人気質でなにかしらこだわりのある人なのかもしれない。
で、今回の仕事ではこの木工ヤスリを使ったサンディングを選んでみた。
いつもならトリマーや電気鉋でおおまかに成形し、グラインダーで荒削り、そのあとランダムサンダー、紙ヤスリで仕上げて終わり、なのだが、ちょっと時間がかかってもやってみたくなったのだ。
電動工具を使うと早い反面仕事が荒くなり、ホコリがすごいのでマスクをする、木屑が飛び散って目に入るのでゴーグルをする、音がうるさいので耳栓をする、で工場はどこもかしこもまっ白け。いいのか悪いのか。
しかし、木工ヤスリは道具の数としては大から小の数本で、作業中はごりごりいうだけでとても静かだし、木屑も作業台の周りだけで飛び散らないのでマスクもゴーグルもいらない。音楽を聴きながら淡々と作業ができた。もちろん、スピードは遅いし、引っくり返してはクランプやバイスで固定しなければならないめんどくささもある。肉体的な力技でもある。
前に何度か試みたことがあったのだが、時間がかかってしょうがないので、ヤスリは飾ってあるだけだった。
でも久しぶりに手にして、僕は気に入ってしまった。これは楽しい。刃物より僕には向いてるかも。
人によってはものすごくつらい作業かもしれないが、摩擦系の作業が好きな僕にとっては、時を忘れて淡々と続けられる。
いろんな種類の高性能のヤスリを探す楽しみもできた。そりゃちょっとやばいか。
二上神社口駅まで徒歩15分
2008 年 12 月 10 日 by SIGN
今日は午後から木工教室の受講を希望する人が一人訪ねてきた。
メールで何度かやりとりをしたが、作りたいものがメールでは伝えにくいということで、わざわざ相談をしに京都から来られたのだ。
電車で2時間もかかる距離を受講しに来るというのもすごいと思うが、作りたいものをうちでできるかどうかを相談するためだけに、というのも奇特だと思う。多分、僕がどういう人間で、どんな場所で、どんな作り方をしているのかが知りたかったんだろうな。
駅から歩いて行く道を教えてほしいと言われたのだが、最短コースは細い集落の中を通る道なので説明しにくく、駅まで僕も歩いて迎えに行った。言われていた時間より少し前に行くと、到着予定時間を読み間違えていたらしく、ぽつんと駅前ベンチの前で立っている女性がひとり。このど田舎の小さな駅には不似合いな光景。彼女かな、向こうは僕を見てにっこり、そうか、僕は初対面でも彼女はプロフィールを見て僕の顔は知ってるわけだ。面白い効果だな。名乗る必要もなく始まるというのも。
駅からSIGNまでは登り坂なので、20分くらいかかる。その間にいろいろここに至る経緯などを聞かせてもらった。
作りたいものは決まっている、それは、売っているものを探したが気に入るものがなく、自分で作るしかないという結論に達したのだと。
工場でコーヒーを飲みながら、うちのデザインの考え方、進め方を説明して、うちの木工教室でやるならそれまでに宿題をしてきて下さいと。また、もう一度近所で木工教室をやってくれる家具屋さんを探してもいいですよ、という選択肢も与えてあげた。
帰りは下りで、道を間違えなければ駅まで15分。ちょっと不安そうだったので途中まで送って別れた。
さて彼女はどうするかな。仕事の都合でスタートはだいぶ先になりそうだけど。
彼女曰く、僕の声は、森本レオに似ているらしい。
朝一番は薪ストーブに火を入れる
2008 年 12 月 9 日 by SIGN
コンソールの上部ができ、今日は脚部に取りかかった。
なんだか時間がかかり過ぎている気もするが、仕事も少ないことだしじっくりやるか。
デザインおまかせで好きにやっていいと言われてるので、どんどん欲が出てきて、すでに予算オーバーみたいなとこもあるけど、SIGNの家具をすごく気に入って下さっているお客さんなので、小さなものでも僕の家具への想いを凝縮したものにしたい。
こういう仕事は毎回代表作を作ろうという意気込みが必要だ。
今月前半はいろいろあって、なかなか集中できなかった。一気に作るのとは違い、ちょこちょこやってるとやたらと細かいディテールが気になってくる。引き出し一個作るのに一日かかってしまった、なんてこともある。
もちろんこの季節、薪ストーブの世話もしなければならないから、自然とペースは落ちるのだけど。
ロシア人一行を無事見送る
2008 年 12 月 3 日 by SIGN
コンソールの製作に取りかかる
2008 年 11 月 27 日 by SIGN
材料はメイプル。硬く、重く、詰まっていて、やさしく、強い。女性的と表現されることがある。
木繊維が細かく、波打っているので、加工すると繊維が寸断され、表面に独特の模様を現す、とともに硬くとももろくなる。
僕の好きな木材のひとつ。
それを今日は木取りして製材した。
デザインスケッチや製図の作業とは打って変わって、体を動かす作業はダイナミックだ。
どちらかと言えばこちらの方が家具職人、木工家の仕事のイメージがあるだろう。家具を求めるお客さんや、これから木工家になろうという人の多くも、そう考えているのではないだろうか。
しかし、やってみるとそうではないことに気付く。いや、気付かない人もいる。果てしなくたくさんある木工の道具の使いこなし方、加工技術、熟練の技。それを求める気持ちはよくわかる。僕もそれはそうだし。でもそれだけで作られたものは、なんだか味気ない気がする。
家具づくりの能力とは、プラモデルの組み立てる前の各パーツが整然と並んでくっついてる状態をイメージするような、プランニングが80%以上だと僕は思っている。残りの20%のダイナミックで楽しい部分を売り物にするプラモデルと違って、木工家はその楽しみも味わいながら、自分が計画した家具に、出来上がってみないと出会うことができない、スリルも味わうのだ。
今取りかかっている仕事は、玄関に置くコンソールだ。
コンソールとは何かと説明しづらいので、完成したらまた報告するとして、よくあるものや、形式にとらわれたものは作りたくないと思うと、例の如くデザインで時間がかかり、今回導入したペリカンくんもスケッチでインクを3分の1くらい消費した。
やっと形がまとまってきたので図面に書きはじめると、またいろいろ細かい問題点が出てきて、使用する材料を工場に並べては定規をあてながら頭をひねるという、非常に効率の悪い作り方をしている。
しかし、こうして考え抜いて書いた図面というのは後から見ても、自分でも考えてるなあと感心するし、その後の仕事の参考にもなったりする。経験は蓄積するもの、苦しんでもひねり出そう。
そんなこんなでなんとか、今日一日で図面は完成した。図面は商品には付属しないものだが、僕にとっては鑑賞できるほど美術的価値を感じてしまう。こらもうフェチですな。だって書いた自分の頭の中にしか今、作品はないのだから。
終わったなとしみじみ
2008 年 11 月 24 日 by SIGN
昨日、9月からはじめた写真塾の最終回だった。
長い間遠ざけ、思い出さないようにしてきたことだったが、これを始めてから不思議と教え子たちの活躍が目に見える形となって現れはじめ、彼等からの報告や連絡があり、実際に再会することもあった。
また全然別の形だが、教育現場の方とも交流する機会が増えたりもした。
初回の頃は、鈍っていた感覚にいらだちもあったが、やっぱり学校、教室、授業というのは僕にとってかつて人生を賭けて取り組んだ場所であったので、回を重ねる毎に蘇ってくる感覚は心地よいものだった。
さて、明日からまた独りで、ただひとつの家具との戦いが始まる。
工場の裏山の二上山は色付きはじめている。
小学生の音楽ってなぜこんなに感動的
2008 年 11 月 18 日 by SIGN
以前うちの木工教室でミニカホンのキットを作りにきた小学校の先生がいた。度々このブログに名前が出てくる、雅魚(がお)君の通っている学校の先生だ。
雅魚君のお母さんから紹介があって、その学校の6年生にカホンを作らせて演奏する授業をしたいので、うちでキットを作れないかと相談を受けた。その前に一度、その先生が実際にミニカホンを作る木工教室を受講したいということだった。
もちろん、その話の内容からしても先生の熱意を感じるので、僕はどんな形であれ協力したいと思ったのだ。
木工教室を受講しに来られたのは、6年生の担任の先生と音楽担当の先生の二人だった。お二人ともすごく熱心で、作りながらメモを取り、写真を撮り、どうすれば子どもたちがうまくできるかを相談しながら受講されていた。
そして自分達も楽しみながら、そう、自分達がどこが楽しかったのか、作りながら何に感動したのかを伝えるために夢中になってミニカホンを一台ずつ仕上げて1日目は帰られた。
その数週間後、再び先生方はSIGNに来られ、今度はクラス全員のミニカホンキット40台分を作ることとなった。察するところ、おそらくその1日目の後は大変だったと思う。いろんな行事が重なる時期に、平常の授業や各業務をこなしながら、自分達が作ったミニカホンとレポートによって学校にプレゼンし、保護者に了解を得、特別授業を組もうというのだ。予算のことも、学校の実習費のやりくりや、各生徒負担の必要性も出てきて、大変だったろうと思う。
だから僕もミニカホン40台分ではなく、材料費とキット製作にかかる日数の木工教室代という形でお金はいただいた。あとはお二人の労働力で、ということで。
2日かけてキットは完成し、学校に持って帰って授業実施のはずだった。しかしその後連絡がなく、うまくいったのかどうか、少し心配していた。
そこへ届いたのが、ミニ音楽会のお知らせだった。添えられていた手紙には、授業は思いのほかうまくいき、普段落ち着きのない子も夢中で、そして穏やかな表情でカホンを磨いていたのだという。そして、この音楽会の準備のせいで忙しく、連絡が遅くなったことをお詫びします、とも書かれていた。
これは行くしかない、なにがなんでも。お土産を用意して。
というわけで今日行ってきたというお話。
兵庫県の宝塚市にある小学校だった。SIGNからは1時間ほどで着いた。
会場である体育館には、子どもたちが作ったミニカホンが壁際に並んでいる。それも、打面にそれぞれ好きな絵が描いてあり、サウンドホールの形は様々、これは楽しい!
そして先生とも再会。開演前で忙しそうなのに、いろいろ気を使ってくれて申し訳なかった。なんと会場の一番前に席を用意してくれていた。保護者は後ろなのに。
全然この学校のことなんて知らないし、二人の先生とがおくんに会ったことがあるというだけなのに、音楽会はとても感動的だった。
演奏や合唱の出来不出来ではない、上手い下手ではない、彼等が取り組んだ時間や、先生の努力や熱意がぶつかってくるようだった。
終わった後の話では、音楽の先生は自分への評価は厳しいようだったが、そうではないですよ、わかるけど。
片づけが済んだ後、僕が持っていったお土産を渡す時間を、先生が作ってくれた。
先生が手紙で、みんな木を磨くのに熱中していたと言っていたので、どうせ磨くなら杉じゃない木も磨かせてやろうと、積み木のようなブロックをいろんな木で作って持っていったのだ。
それで突然こんなことになったのだが、小学6年生に短い時間だったけど木や家具についての話ができて、なんかよかった。先生も、こんなに集中して見てくれるのは珍しいとか、質問で全員手が挙がるのは初めてとか、お世辞だろうけど言ってもらえて、久々の黒板の前に立っての授業に幸せ感じてしまった。
多分、こんなおっさんが珍しかっただけなんだろうけど、小学生の授業ってかなりエキサイティング。
初ペリカン購入で何か変わるか
2008 年 11 月 16 日 by SIGN
製作の行程の中で、僕はいつもデザインで苦しむ。
悩んでいる時は、ほんとに才能ないんじゃないかと思うくらい、自分が情けなくなることもある。
木工家なんだし、デザイナーじゃないんだし、そんなに悩まなくても、そんな風には考えられない。
オリジナルの家具を作っている以上、絶対に自分でその形は決めなければならない。それはこの仕事をする人はみなそうなのだが、自分の技量や知識の範囲で、もしくは過去の経験やスタイルによって決めてしまうことが多く、それに予算や手に入る材料なんかを考慮していくと、可能の範囲はせばめられ、迷うほどのことはなくなっていく。はずだ。
しかし僕にはできないことがある。
たまに、あなたの作る家具は何系、何風?と聞かれることがある。それはきっと北欧風とかカントリー風とか、デザイナー系とかアート系とかいう答えを期待して聞いているのだと思うのだが、もしそのとき僕の中でなにか言葉が浮かんだとしても、それを口にはしたくないという思いがある。まだまだ自分を限定したくないからである。
でもそれができる人は、見えた人は、そこから楽になれるんだと思う。
その尺度によって、迷えばそれに沿い、先人の作品に答えを求め、あとはしっかり作れたらオッケー、技術的に精進すればオッケー、業界で名前が売れたらオッケー、長く続けられたらオッケー。
でも僕は、自分の作るものが何かに似はじめたら、そのデザインを捨てたくなってくる。それが考えてる段階でも起こる。そしてもし、考えていたものが、すでに誰かがやっていることを知ってしまったときは、ものすごく悔しい。もしくは歯ぎしりしながらその人に憧れたりする。
僕がいつもデザインや図面を書く時に使っているのは、シャープペンシルか鉛筆である。別にこだわっているわけではないが、一番早い気がするからだ。
最近はパソコンで書く人が増えてきているが、僕にとっては遅い気がするし、頭の中で立体化するには紙と鉛筆が一番僕にとってはやりやすい方法に思えるのだ。
よく言うアナログ人間なのか、いや、デジタルはこの世にコンピュータが普及しはじめた頃から使っているし、アナログ派の人からすれば反対の部類に当てはめられるだろう。
ただ、今やってることはデジタルでは解決できないことだらけで、それに取り組むことが気に入ってしているのだから、やっぱり紙と鉛筆なのである。しかもシャープペンシルは中学の卒業祝いに、学校からもらったものを未だに愛用している。
しかしこう毎度行き詰まっていると何か変えてみたくなって、スケッチ用に万年筆を買ってみた。
今まで筆記具としての万年筆にずっと憧れてはいたが、字を書くこともあまりなく、また文章を書くとすると昔からワープロかパソコンで、書いたとしても鉛筆やボールペンの手軽さに勝るものはなく、結局手に入れるまでには至らなかった。
やっとその理由ができたのである。
といっても購入したのは、万年筆らしい万年筆ではなく、メーカーはドイツの老舗でモンブランと並んで有名なペリカンのものだが、これは子ども用の万年筆なのだ。名前はペリカノジュニア。
見た目はおもちゃみたいで、気品も高級感もなく書くぞという意気込みもない。しかしこれはドイツの小学生が最初の文字の練習に使うために開発されたものらしく、日本で言うところの書き方ペンなのだが、そこはさすがドイツペリカン社、書き味は滑らかでしっかりした本物なのだ。
万年筆を買ってみようと思い立ち、物色しに三省堂の文具売り場へ行ってみた。そこで国産の有名メーカーの1〜3万円クラスの万年筆を試し書きさせてもらって、やっぱり高くなればなるほど書き味は気持ちいいんだなと感じた。それで、販売員さんに用途とほこりっぽい工場で使用することを話し、書く環境として万年筆にとって大丈夫かと聞いてみたところ、そんなこと言われたのは初めてで、なんとも言えないとのこと。万年筆で絵を描く人は最近増えてきているので、スケッチを描くのに向いているのは探せばあるだろうし、汚れたりほこりが詰まればペン先を水で洗うか、持ってきてくれれば超音波洗浄機でクリーニングします、と。
そのとき多分僕は無意識にめんどくさそうな顔をしたのだろう、その販売員さんはもう一つ提案をしてくれた。安いので一度試してみて、使えそうだったらいいのを買われてはどうか。といって出してきてくれたのがこのペリカノジュニアだった。
本体はスケルトンのポリカーボネイト製。インクはカートリッジ式。線の太さは中字くらいの1種類。キャップにフックは付いていない。でもグリップ部にはラバーが巻いてあり、指の形に窪んでいて、そのとおりに握れば正しくペン先が紙に触れるようになっている。さすが書き方ペン。しかも名前シールが書き損じ用か4枚付いていて、それをスケルトンを生かして内部に貼るようになっているところがにくい。色はブルー、レッド、イエロー、グリーンの4色があり、僕はブルーを選んだ。
早速使ってみて、アイデアに何か影響があるかはまだわからないが、描く線の新鮮さにちょっと嬉しくなってくる。描き味も気持ちいい。安くてもこんなにいいものを使って勉強できるドイツの子は贅沢だなと思う。それは大人が子どもに対して、自分の立場で何を提供できるかを真剣に考えているから、それも企業としてできるところが素敵な国だと思う。
ざくっと工場のペン立てに突っ込み、描きたい時にガンガン使いたいのだから、気どった万年筆よりこいつが良かったのかもなどと思いつつ。
「杉の子ども用ロッキングチェア」をアップしました
2008 年 11 月 14 日 by SIGN
作品一覧/そばにあると楽しい のカテゴリーに、ブログでも紹介しました、
「杉の子ども用ロッキングチェア」をアップしました。
教育に目覚めた女性と、浄化姉妹
2008 年 11 月 12 日 by SIGN
昨日の男話のせいで中断した続きを朝からやっていた。
この仕事を続けていく限り、誤解の上に届く便りもある。それをいちいち正すことも気分が悪いし、転送するのも面倒だし、破り捨てるのも気が引ける、何より食っていくためにはそんなことも必要だったりする。かなしいかな。
とにかく必要以上の仕事はしまいと、午後から来客の予定が入っていたので、午前中に仕上げてしまうつもりだった。
これは写真のプリントをのせるトレイ。子ども写真スタジオで、撮影した写真のプリントをプレゼンする時に使用するという。
まず一報、こんな仕様でこういうものが欲しいけど作れるか、と聞かれ、予算的には厳しかったが知り合いなのでyes。次にフリーハンドで書かれた図面をもらう。このとおりならなんとか短時間でやっつけられそう。で、半日の予定を組んだ。
午後からの来客というのはカホンのお客さんで、先日メールでの問い合わせがあった女性だった。
現在、公立支援学校で非常勤講師をされている方で、来春から高校教諭の採用が決まったのだという。教育大学で音楽を学び卒業したが、就職したのは企業のOLだったそうだ。しかし、何か違うと思い立ち、支援学校すなわち体に障害のある方が学ぶ学校での講師の仕事に転職した。そこでの活動でふたたび音楽教育に目覚め、自らの郷里で採用試験を受け、見事合格。これからの活動に思い描く日々。
そんなとき、学生時代に彼女の友人が演奏に使っていたカホンという楽器を思い出し、これなら教材として子どもでも障害を持つ人でも楽しめるのではないかとネットで調べていたら、このサイトにたどりついたらしい。
なぜか先生のお客さんが多いSIGNへようこそ。さらに支援学校とは。かなり縁が作用してるなあ。
当麻寺駅で待ち合わせをし、車で迎えにいった。今日はいい天気だったので歩いてもよかったかな。
工場に着いて早速カホンを見てもらった。こないだのイベントに出品した2台のVだ。バーチとメイプルを試奏してもらい、どちらか気に入ったらお安くします、もし違ったら作りますという話だった。
でもさすが音楽の先生で、僕が少し叩いた音を聞いただけで、メイプルがいいと言われたのだ。自分でも触ってもらったが、やっぱりこっちだという。音域の広さや音の立ち上がりが気持ちいいメイプル。というわけで37番のメイプルは彼女のものとなった。
時間に余裕があるというので、コーヒーを豆から挽いていれ、飲みながらいろいろと話をした。カホンの話、家具の話、教育の話。
雅魚くんの話をすると、とても興味深そうだったので、がおママのホームページや稲岡先生のことも教えておいた。不思議だな。もしかするとまた繋がっていくのかもしれない。カホンを作っているだけで、こんなにも的を射た繋がりが続くものだろうか。
彼女を駅まで送って工場に帰り、午前中に終わらなかった例の仕事の続きをしていると、もうすぐ完成という時に、仕様の見落としを指摘された。
いや図面にはないでしょ。最初の話では言ってたはず。それじゃ値段的に。もう遅い。なんじゃそら。
結局、言われた通りにし、夕方までかかった。
その塗装をしている時に外から、こんにちは!、とかわいい声がした。近所に住む小学生の姉妹で、よくうちの前を犬を連れて散歩している女の子だった。
そういえば以前、その犬の犬小屋を作ってほしいと、いや一緒に木工教室で作りたいと言われたことがあって、じゃあどんな形の家がいいか絵を描いておいで、果物でも野菜でもなんでもいいからモデルを決めてね、と宿題を出しておいたのだった。手にはノートを持っている。
僕は急いでのらくらやってた塗装を終わらせ、彼女たちのノートを見せてもらった。すると、かわいい!!!
もう、どうやってこんなの木で作るんだ、というのや、モデルに選んでるのが、ケーキ、さかな、ケイタイ、テレビとほかにもいっぱいノートに描いて来ている。もちろん、その家の入り口らしきところに犬の絵も。たまらんな小学生、やられた!
一枚一枚を見ながら話を聞いて、どれにするか話し合った。これってめっちゃSIGNのオーダーメイドじゃないか。もうおじさんタダでもやっちゃう。
で、最終的に決まったのがテレビ。二人の意見で赤いテレビでアンテナ付き、画面がもちろん入り口。ああ。
簡単に完成のパースを描いてあげて、二人は帰っていった。
今日の一日、これですべて浄化完了。
次の仕事の準備をしようと、朝から資料を集めたり、調べものをしたりして、さあやるかと思ったら電話が鳴り、知り合いの子ども写真スタジオから小物の依頼があって、おっとそっちが先かと資料を片付けて材料を準備しはじめたら、見なれたキャンピングカーが工場の前に停まり、看板犬モコが騒ぎ出した。
いろーんな意味でいつもお世話になっている、理想建築工舎CRAFTの堤さんだった。
今日堤さんが来ることはわかっていたが、何時に来るかは聞いてなかった。いつも突然来てしゃべりたおして、またはギター弾いたり歌ったりして帰っていく。工場を移転してからは少し足は遠のいたが、前の工場は奈良県の背骨とも言われる24号線のそばにあったので、仕事で毎日爆走キャンピングカーで走り回っている堤さんはよく、SIGNを休憩所のように立ち寄る場所にしてくれていた。そんなこともあって、僕と堤さんの関係は深まり、仕事の話はもちろん、SIGNカホンへのアドバイス、材料提供、そして何より今のこの場所への移転に関しても大変お世話になった。大恩人である。
なんて書くと、しょうもないこと書くな、と言われそう。なんの気兼ねも遠慮もなく言い合いができる人なので、こちらも一緒にいて楽だし相談もしやすいし、今から行く、と連絡があっても特にもてなしの準備をすることもなく、普通に仕事をしているところを当たり前のように中断させられるから、今日も待つともなく仕事をしていたというわけ。
お互い話し出すと数時間があっという間に過ぎてしまう。
今日だって本当は、月末に二人の共通の知り合いである音楽家の丸山さんがロシアから友達をつれて奈良へ来るので、案内も兼ねたホスト役を堤さんが頼まれ、僕も巻き込まれ、それでどこへ連れて行くだの何食わせるかだのを話し合うために来たはずが、そんな話はそこそこに、いつもの調子で話し込み、気が付けば3時間が過ぎていた。
こんな打ち合わせでいつも最終的にはちゃんと結果を出せるので、僕らはプロフェッショナルだ。めちゃくちゃ真剣に話をしていたくせに、堤さんの、どーにかなるやろー、で話は終わる。まじめなくせにそういうスタンスはお約束なのだ。
さて、結局ロシア人に関する打ち合わせは、別れ際の二こと三ことで終了。まさに極秘会談のプロ並みだ。