あなたと、あなたをとりまく環境を
肖像画を描くように、一つの家具で 描き出す作業
それが、僕が考える オーダーメイド家具の製作です
SIGNのポリシー、オーダーメイド家具の魅力
「ウォルナットのダイニングテーブル」完成、納品待ち展示中
2011 年 2 月 24 日 by SIGN
納品日が27日(日)になりましたので、26日(土)まで展示しています。
現在塗装乾燥中で天板と脚部は分解した状態ですが、御覧いただけます。
SIGNの家具はすべてオーダーメイドのため、納品すると手もとになくなってしまいます。
いずれ展示会等でオリジナル作品をお見せする機会を作りたいとは考えていますが、今のところその予定はありません。
毎回、完成から納品までに時間がある時にだけ、納品待ち展示会として公開しています。
どんな家具作りをしているのか、SIGNの家具を見てみたいという方、この機会にいかがですか。
来られる際は、外出している場合がありますので、電話かメールであらかじめご連絡下さい。
磨ける塗装は楽しいなあ
2011 年 2 月 23 日 by SIGN
午前中一回目の塗装をし、午後から600番まで油研ぎをした。今回は着色がないので、やる気になればとことん磨き込める。
塗装をするとやはりがらりと雰囲気が変わり、ウォルナットらしい重厚で高級感ある色が浮かび上がってきた。
この色って何を作っても重そうに見える。
そして、磨き込んだウォルナットというのは質感がすばらしい。この600番あたりの手触りは、気を失いそうなすべすべ感なのだ。
オイルフィニッシュは塗膜ではなく木そのものを磨いて出す艶だから、手触りがこんなに感動的なんだろうか。
ここからさらに段階を上げていけば、この色と相まって鏡面のようにも仕上げることもできるが、この感触で止めておきたい気もする。ダイニングテーブルなのであまりピカピカにするものでもないし、しかし研ぎの状態で終わりでは耐水性が心配なので、トップコートにワックスは必要か。
じゃあ研ぎはこれくらいにしてあと一回ワックスを上塗りして半艶くらいに仕上げようか。
とにかく次に進むには一晩しっかり乾燥させること。
触ってみなきゃわかりませんよ
2011 年 2 月 22 日 by SIGN
今日は細部の加工で終了。明日から塗装に入る。
脚部を取り付ける溝を掘るのがちょっとだけ苦戦した。
今回のテーブルはお客さんの希望で幕板なしの角脚ということで、当初金物で取り付けることも考えたが、SIGNの仕事としてはできるだけ木だけで作りたいと思い、脚二本をつないだ反り止めも兼ねた補強部材を天板裏に少し埋め込むことにした。
貼付けるだけでもよかったかもしれないが、幕板なしにこだわるお客さんの思いもあり、裏面をすっきりさせる意味でもこの部材の厚みを少しでも減らしたいということと、埋め込むことで接合の強度を上げるのがねらい。
金物の方がすっきり簡単にできるだろうところを、わざわざ手間をかけてギャンブルしている感じ。
そして、ディテールに関する加工では特に面の取り方にもこだわってみた。
角は丸くして欲しいという注文があったので、天板のコーナーは丸くカット。脚部もすべて角は丸い坊主面なのだが、それぞれアールを変えてある。
天板のエッジは多分お客さんのイメージではかまぼこみたいな形状と考えておられたと思うのだが、それは北欧風デザインでみんな当たり前にやってることなので面白くなくて、ちょっとした工夫をしてみた。
天板を上から握ると、おお、って感じの。いや感じてくれるかな。
シンプルながらいろいろ考えたけど、もう今回のデザインの見せ場はここかもしれないな。
初心者忘れるべからず、なのか
2011 年 2 月 21 日 by SIGN
職業訓練校で木工を習った時に、仕上げの鉋がけをする前に濡らしたウエスで水拭きをするようにと指導を受けた。
プレナーや荒削りの際に切断されずに押さえつけられただけの繊維を、水を含ませることで起き上がらせ、それを仕上げで削り取るために。
今でもテーブルの天板には必ずこれをやる。
なんなら仕上げのサンディングの前にもやらないと気持ち悪い。
オイルフィニッシュは結局木に水がしみ込んでしまうし、その時その寝てたやつが起きだしてくるとどうしようもない跡が残ったりする。そんな失敗も何度かあった。
今では塗装の仕方でカバーする方法も知っているし、塗装前の状態で水に濡らす方が逆に心配な気もするが、反らないかな、接着はがれないかな、とかドキドキしながら結局やっている。そのほうが仕上がりがきれいだと信じて。
こういうのって他にも探せば色々あるような気がする。
教えられた通りに今でも言い付けを守っていることって。
前の仕事を辞めて、木工はまったくのゼロからだった。基礎は訓練校で一年勉強してこいと師匠に言われ何のためらいもなく入学したのだが、とにかく触れるものもやることも初めてのことばかり。しかしそこでの一年という限られた時間の中には疑問を持ったり悩んでいる暇はなく、とにかく残らず体に取り入れて、何を後で使うのか捨てるのかの判断は実際に自分で始めてみないとわからないことだった。
だが初めてだからこそ貪欲に吸収し疑いもなく覚えたことは、その後その仕組みが分かったとしても、体にしみついて習慣づいてしまうのだろうか。
僕は子どもの頃、父親に躾で唯一言われたことが、「出されたものは残さず食べろ」だったので、どんなに苦しくてもいまだにそれは守っている。
脚の貼り合わせと天板加工はぎ合わせまで、今日はひたすら接着の日だった。
脚の角材を貼り合わせている間に、4枚はぎの天板の板をそれぞれ厚みを出してカネ(側面の直角)を出し、ジョイントカッターでビスケットの溝を突く。待ち時間を利用して同時進行。
天板用に仕入れた板が同じウォルナットでも4枚とも表情が違い、ウォルナットも色々ありますよみたいな天板になりそう。
自然の木なのだから当たり前のことだが、色の差をなくし、よりウォルナットらしく見せるためにこれにウォルナット色の着色をする人も、またそういうニーズもあるんだろう。
ウォルナットは使用年数とともに色の変化が楽しめる材だ。珍重されるウォルナットのヴィンテージ家具には、ところどころ黒い筋の入った黄土色にまで変色したものを見かける。
そこまで大事に使われ続けた家具だからこそ値打ちがあるんだと思う。時折その色の家具を新しく作って欲しいという人もいるが、それは無理なのだ。
最初は紫がかったこげ茶色、それがだんだん色が浅くなっていき、長年使う内にオレンジ色になり黄土色に変わっていく。
多分このテーブルもいずれは4枚とも同じ色に揃っていくのかもしれない。
室内での使用なら何十年もかかるはずが、毎日日の当たるところに置いてあり、5年くらいでそうなったものを実体験として知っている。
その劇的な変化がウォルナット。
今回のお客さんがウォルナットを選ばれた理由のひとつだった。
知らなきゃ難しくはない
2011 年 2 月 16 日 by SIGN
その素晴らしいウォルナットの板をずらっと並べて木取りを考える。
今回部材は少ないが、それだけにひとつひとつの顔がはっきり見えるデザインとも言える。
こうして並べると一枚一枚それぞれに表情があり性格があって、シンプルなデザインに当てはめるのが難しかった。
もちろんデザインしてから材は注文するので、寸法や必要な材積にはマッチしているものの、同じウォルナットでも、いやウォルナットだけにそれぞれが個性的で。
チョークペンシルで板に木取りを書き込み、それさえ終わればざくざくっと思いきってカット。ウォルナットは木目によって、ノコを入れると応力が抜けてぐわっと曲がったりする。それを少しずつ手押し鉋盤で整形していく。形さえ整えば、あとは安定した材ではある。
加工は脚部から始めた。
脚になる角材は3枚張り合わせで作ることにした。
無垢の角材でもいいとは思う。これでは余計に手間がかかる。しかしその方法のいいところは、精度が出しやすいこと、好きなサイズを作れること、そして変形しにくいこと。
もちろん、張り合わせのノウハウというのもある。
今日の作業でこのウォルナット、ほんとにいいと思った。
大阪-奈良は必ず山を越える
2011 年 2 月 15 日 by SIGN
朝から乾材木商店さんに電話をかける。
月末納品予定のダイニングテーブルに使うウォルナットをお願いした。
ウォルナットで作って欲しいというお客さんからの希望で、去年から乾さんにはお願いしていた材だった。
生産地で製材されたものではなく、国内で製材された良質のウォルナットは少し割高だったが、お客さんの判断で質の高い方を使わせていただくことになった。
またもや昨日の大雪でこのあたりは雪景色となり、工場の前の坂道も積雪と凍結で午前中は配達も困難と思い、乾さんにはその日の配達の最後に回ってもらうようお願いした。
ちょうど今日師匠の永田さんのところに行く用事があったとかで、その後にしてもらった。
最近永田さんに会ってないな。
会いに行こうと思えばいくらでも行けるのに、こんな雪に閉ざされた日に思い出すとなんだか妙に遠く感じる。
永田さんのすぐ近くで二人でやっていた弟弟子が解散するという知らせの葉書が届いた。
向こうはどうなってんだろう。
来るわけでもなく電話でもなく、今どきメールでもなく、葉書っていうところがかえって返事しにくくて心配になる。
材木が届くまでに年末年始頑張って持ちこたえてくれた手押し鉋盤の刃を交換することにした。
最初の頃は要領が分からなくて、調整にすごく時間がかかっていた。
三枚の刃を回転するドラムに平行に同じ高さにセットする。調整は100分の1ミリ単位。何度もやればできるようになるもんだ。それだけ仕事をしなきゃならないってことだ。
4時頃、乾さんが到着した。持ってきてくれたウォルナットを見てちょっと感動してしまった。確かにきれいだった。
現地びきと違い、同じ35ミリ製材でも精度が高く、普通なら35ミリから加工段階でとれるのは30ミリくらいなのだが、これなら33でもいけそうな感じだった。天板を少し厚めにできるかも。その分値段は高いんだけど。
そう、あまりにいいものを手に入れた時って、焦りに似た不安がよぎることがある。ああ買ってしまったよ。
今回仕入れた分で10万超えるって。でもいいものだから、と慰めるように僕に言って乾さんは帰っていった。
ここに来る前に永田さんとこに寄ったって事は、これを永田さんも見ているということで、「あいつどんなでかい仕事すんねん」と思われてるだろうな。
人助けもやるっつったらやる
2011 年 2 月 12 日 by SIGN
このあたりにしては大雪とも言える、珍しく20cm近く積もった日に、かかってきた電話の声の後ろでざくざくという足音が聞こえていた。
その電話は僕が木工の授業をさせていただいた大学の学生で、その授業の担当の先生から以前紹介された4回生で、卒業制作の手助けをする約束をしていた女の子だった。
去年約束はしていたものの、その卒業制作の提出期限である今日の前日まで、その電話がかかってくるまで、なんの連絡もなかった。
電話の用件は、今からうちの工場で作らせて欲しいということだった。
すぐ近くまで来ているからと。
去年彼女を紹介されてからすぐに、それに必要な材料を仕入れてあったが、連絡がないのでどうしようかと思っていた。
卒業がかかっていて、強引に押し掛けるしか方法を思い付かなかったのを追い返すこともできず、断りようがなかった。
結局それから10時間かかって作品は完成した。
本棚兼ねこタワー。
並んだ本の間を猫がかけ登るという、微笑ましい作品。
それに反してほとんど休憩なしで終了午後10時、ハイピッチで作業をした体はがたがた。工場は写真茶話会前日だというのに木屑と粉じんで散らかりまくり。
そして今日はその掃除と茶話会の準備もあるのに朝からその作品を学生とともに大学へ届け。
ああもう今日は茶話会だめだなしゃべれないな、と思っていたが、マツノさんが久しぶりに参加されてカメラ談義で前半盛り上がり、テンションが復活した。
結果やっぱり僕はカメラ好きなんだというお話。
4倍速くらいでお願いします
2011 年 2 月 10 日 by SIGN
杉ベンチを発送した。
子どもたちのところへいってらっしゃーい。
さあ、ダイニングテーブルにとりかかろう。
まずは図面。いそげやいそげ。
4月は茨城県笠間のイベント用の作品制作に専念と考えると、今入ってきている仕事は三月中に完了しなければならない。
うそーっ
杉ベンチ発送待ち展示中
2011 年 2 月 8 日 by SIGN
杉の子ども用ベンチも完成し、今ワックスの乾燥中。
この手触りは杉独特のものだ。
普通杉というのは荒く使われたり、木目の通ったものは建具や調理器具類に用いられたりするが、こんなふうに番手の細かいペーパーで磨かれオイルとワックスで仕上げたものに触れる機会というのはあまりないだろうと思う。
木製品における杉材の地位を低くしているのは、ひとつは塗装法によるものかもしれない。もともと柔らかい材質なので、それを補うためかラッカーやウレタンなど硬い塗膜ができるもを分厚く塗ってある木工品をよく見かける。しかしそれによって、てかてか光り、質感が失われ、柔らかいものに硬い皮膜があるため割れやすく、割れればそこから水が入り変色し腐ったりする。
そんな家具誰も使いたくはないだろう。
杉は傷がつくもの、色が変わっていくものということを認めて使うなら、他の材にはない温かみや、懐かしい香りや、シルクのような手触りや、使い込むほどに擦れて変形し艶が出てくるのを自分の一生の内に楽しむことができる。
最初の傷や汚れは気になるけど、それが積み重なっていくうちに風格に変わる。
いいねえ杉、杉の家具マジでかんがえよ。
お試しセット期間終了
2011 年 2 月 7 日 by SIGN
今日は大学での最後の授業だった。
なんとか無事全員がスツールを完成し、出来はまちまちだったけど、完成品が整然と並んだ姿がなんかよかった。
例のアンケートのコメント欄に書かれた全員の感想を、担当の先生が最後にみんなの前で読み上げられた。もちろん名前は明かさずに。
そのほとんどに「楽しかった」と書かれていた。
それを聞いて僕は、去年は教えてもらった学生がしたこの授業に対する採点結果を、今回は聞かないことにした。
何回目からか、クラスで一番やんちゃそうな学生が僕のことを「リーダー」と呼ぶようになったこと。その学生が今日「リーダーの授業、もうないの?」と聞いてきたり、それにつられてか何人かは僕のことを「先輩!」と呼んでみたり。
最後に何かお話を、と担当の先生にうながされ、いつもの無駄話を始めた時にも、じっと僕を見つめている学生や、なんだかにこにこしているやつがいて、最初の頃は彼等の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶのを快感に感じていたのに、どうにも、こんな一番最後になって僕の語りも認知されてきたのだ。
この手応えは、まさにこれからという実感であるにも関わらず、彼等とは今後会うこともないんだろう。
完成した作品を手に、帰り際「ありがとうございました、おつかれさまでした、」を何度も何度も繰り返す学生に、「おつかれさん」しか言えなかった。
「デザインは言葉を越えた言語であり、みなさんが作ったスツールをデザインしたデザイナーとは母国語も生きた時代も違うけど、こうして見て触れて実際にそれを作ってみることで、その形からデザイナーが込めた想いや情報を読み取ることが出来ます。
——-、デザイナーとは形を考えるだけの人間であってはいけない。言語であるなら伝えようとしなければいけない。そんなデザイナーになってください。」
最後にお話を、が、最後のお話になってしまった。不覚。
柱カバーの取り付けも無事終わり、順番から言うと次は千里中央のダイニングテーブルなのだが、そちらをじっくり取り組みたいということもあり、ひとつ仕事を挟むことにした。
期限はどちらも2月中でということだったし、そのテーブルの次の仕事というのはすでに図面もあり、短期間で終わらせることができる仕事だったからだ。
杉の子ども用ベンチ。
もともとは奈良の天理市にある幼稚園のためにデザインしたベンチだったが、ホームページに載せてたら問い合わせがあり、今までに合計20台以上は作っている。
コストを押さえた作り方と、奈良の吉野杉を使用した温かみのあるベンチ。シンプルながらも機能性についてはいろいろ考えて作った。
今回の注文は東京のとある大学附属幼稚園から。(ここまでいうと名前言ってるのと同じか?)昨年一台購入され、気に入っていただいてもう一台欲しいとのこと。今日は午前中その材料となる吉野杉のパネル材を仕入れに、吉野にある知り合いの材木屋さんに行ってきた。
品質の高い吉野杉の赤身のパネル材ということで最近人気が高いらしく品薄で、朝電話した時にはほとんど在庫がないと言われたが、運よく必要な材積が取れる分のアウトレット品が一枚残っていたので、それをいただきに。
若い社長で僕より年下なのだが、そんな気がしなくて同年代のように親しく話ができるし、そんなおつきあいをさせてもらっている。彼に会うと「杉で何かできないかなあ」といつも思う。このベンチには結構利用させてもらっているけど、そんな関係から生まれてくるものもアリかなと思う。
近々規格ラインナップをリニューアルするという情報も聞いた。(これまだ内緒?ごめんね中西さん)そうなるとまた利用範囲が広がるだろうな。
「ブログ読んでますよ」と会うといつも言われる。「忙しそうで、」いやいや。
ほんまに忙しいで、と言えるようにがんばらな。
「美容室のパーテーション・赤毛のアン」をアップしました
2011 年 2 月 4 日 by SIGN
作品一覧/人が集まるところカテゴリーに、「美容室のパーテーション・赤毛のアン」をアップしました。
なんだか春ですね。
関西では、どんくさい
2011 年 1 月 31 日 by SIGN
今日は朝から妙に悪い予感がして、納品なのに縁起でもない気のせい気のせいと自分にいい聞かせながら、午前中最後の仕上げ作業をして積み込みをして現場作業の道具類を用意して。
しかしその途中に家具は無事だったけど血の気が引くような出来事が連発し、いやいやそんなことに気を取られていてはいけない、ちゃんと納品しなきゃと現場に着いたらまたいろんな問題が起こり。
ひとつひとつは簡単に処理できることでも、連発して数が増えると簡単にはいかない。
せっかくやっと納品できたのに、お客さんとゆっくり話もできず。
持ち帰りの宿題ができてしまったので、それを納める時にはちゃんと話がしたい。
こういう日って一体なんなんだろう。
行かせまいと足を引っ張られても、行って問題が起こっても、行かなきゃならないんだ納品なんだから。
この仕事が始まってからマホガニーの事ばかり書いているようだけど、一工程進む毎に発見があるから今日も書いておこうと思う。
結局丸一日かかってしまった着色塗装。その作業から感じたマホガニーの塗装に対する性能のよさにまた感心してしまった。
単純に言うと、すこぶる色のノリがいいのだ。そしてコントローラブル。
今回の塗装のために調節した色ではあったが、その塗り方によって発色も光沢もコントロールがしやすく、ムラもほとんど出ない。
こんなこともマホガニーが木工家に愛されてきた理由の一つかもしれない。
天然の色が一番いいのは間違いないけど、こんなに性能がいいと着色もしたくなるよな。それが着色されたマホガニーの木工品をよく見かける理由なのかもしれない。
褒めてばかりのマホガニーも使い方次第で、飾っておくような家具ならいいけど、常時触れたり座ったり物を置いたりするものとしては、この柔らかさには不安がある。
この材質を理解してからの発想が必要だと思った。
着色の乾燥を待って、また一日かけてクリアのワックスを塗る。
この季節、オイルはなかなか乾かない。あせればきっと色は動いてしまう。
工程が増えたので、月曜の納品にはぎりぎりになってしまい、納品待ち展示は今回はなし。
この美しい赤毛を見るには、依頼者の美容室へ行ってもらうしかない。
これが柱カバー、その着色済み
2011 年 1 月 27 日 by SIGN
パーテーションと同じマホガニーを使って、この美容室の入り口の柱を変身させる。
といっても上からこのカバーを被せるのだが。
もともとは黒く塗装をしたアルミの柱で、そこにガラスの扉がついている。道路に面した窓枠などすべてがこの黒いアルミで、本当はみんな木製にしたいくらいなのだという。
以前そんな相談をされたのだが、入れ替えるにはあまりにも大掛かりになってしまい、コストもかかる。と、その時は話は流れた。
だけどせめて一番太いこの入り口の柱だけでも上に板を貼付けることで木のように見せることはできないかと、パーテーションの打ち合わせの時にまた相談された。
たしかにできないことはないのだが、一応屋外ということもあり、耐久性や耐候性などを考えると家具より寿命は短そう。ぺらぺらでは心もとないので、そこそこの厚みでがっちりコの字型に作った。
そしてまた表面を曲面にというご希望があり、手で触れなければ分からなくらいの複合曲面にした。マニアックで有機的な手触り。
簡単に「丸くしてよ」って言うけど、意外と手間がかかる。こういうの得意だからいいけど、追加変更は見積に入ってまへーん。
パーテーションを取り付けるシャンプー台には戸棚があり、その扉も同じマホガニーで作り直すことになっていた。
もともとはフラッシュで作られた戸棚で、側板から伸びるようなパーテーションと扉によって、お化粧直しのようでもある。
扉は、いくら軽いマホガニーで作るといってもフラッシュに対して無垢材であるため、なんとか軽量化を考えたかった。
そこで鏡板を薄い細切りの板を並べる形にしてみた。これは兄弟子のアイデアを拝借したものだけど、板塀とのデザイン的な統一感もあり、自然に波打つ薄切りのマホガニーが髪の毛の揺らぎを連想させることとなった。
それでも少し重いような気がする。あとは蝶番が頑張ってくれるよう祈るだけ。
さあ作るのはあとひとつだ。柱カバー。何のことかと思われるだろう。
それはまた明日。
来週月曜日、31日に納品が決まった。
今日はパーテイションを取り付けるシャンプー台のキャビネットの扉にとりかかった。
塗装も着色する分工程が増えたし、がんばろう、あともう少し。
そのキャビネットの上に、風草木の鉢植えが乗っかる事になっている。
その納品に森川君も31日に現場へ来ると言っていた。
今年の1月はなかなか終わらない。長く感じる。
パーテイションも塗装の前の段階まで進み、今日は午後から依頼者の美容師さんが見にこられた。
これに施す塗装を決めてもらうためだった。
マホガニーという材を僕は今まで使ったことがなく、経年変化でどのようにどれくらい変化するのかを自分の体験としては知らない。
よく目にするマホガニーの木製品は赤茶色をしているし、ギターのボディーに使用されているのは赤みがかったオレンジというのもある。
もちろん塗料自体に色がついたものを使用しているのだろうけど、その色のイメージを依頼者の方も持たれていたようだ。
塗装のサンプルで用意したのはクリアのワックスを塗ったものと、そのワックスに赤の顔料を混ぜたもの。前者は明るいオレンジで、これがもしかしたら次第に深みを増すのかもしれない。でも保証できない。
後者は導管から色が染まってしまい、マホガニーらしさが失われてしまった。
類似品、代用品といわれるニヤトーや赤身のラワンでは、みるみる色が濃くなり、古い壁材などに見られるこれらの材の黒ずんだチョコレート色にまで変化しているのを見たことはある。はたして本物のマホガニーはどうなるのだろうか。
そのあたりに自信がなくて、結局依頼者の希望通り市販のマホガニーカラーのワックスに赤の顔料を少量混ぜて、いわゆるマホガニーの色を再現し、トップにクリアのワックスを塗ることになった。
これなら当分マホガニー色でいてくれるはずだけど。
SIGNの写真茶話会20「関心事」
2011 年 1 月 24 日 by SIGN
製作日誌はこの記事の下にあります。
SIGNの写真茶話会20を開催します。
2月12日(土)
10:00〜12:00 基礎講座 (定員7名)
13:00〜17:00 表現講座 (定員7名)現在予約4名
写真茶話会ってなに?という方は「教室のご案内」をごらんください。
お問い合わせ、参加予約はメールにてお願いします。sign.norioyuasa@gmail.comまで。
当初入れる予定ではなかったが、依頼者の希望でSIGNのシンボルデザインのスピンドルを入れることになった。
家具そのものがオリジナルのデザインなのだから、十分それでSIGN家具なんだけど、この方ついにSIGNフリークになりつつあるのかどうしてもということだった。
その辻褄を合わせるためにいろいろ考える。無理矢理な感じではやりたくないし。
依頼者の要望としては、この美容室に来るお客さんで、ある年配の女性が、椅子から立ち上がる時に必ずどこかに掴まって立つそうで、このパーテイションの一部にそういう場所を設けたくてスピンドルを配置して欲しい、ということだった。
だとするとそういう形にしなければならない。握り易く、すべりにくく、少ない力で体重を支えられる形状でなおかつSIGNのシンボルデザイン。で、この形。
ステンドグラスの横に配置する。
またこれの色を変えて欲しいということもあったので、材をモンキーポッドにしたのだが、この材は旋盤にかけるような材ではなかった。粘るような弾力がある材で硬く、こういう部分にはいいかと思ったのに、その材質が旋盤で裏目に出てなかなか削れなかった。
きっと掴まるには抜群の性能だろうと思う。
午後に次のお客さんが訪ねてきた。
新婚夫婦で奥さんからの御依頼で、ダイニングテーブル。デザインと材の打ち合わせをした。
ご主人には初めて会ったのだが、これまたちょっと面白い人で。そのご職業を形に織り込めるかどうか。
ご主人には、奥様優先で、とは言われたけれど。
ステンドグラスはアンの心、窓
2011 年 1 月 21 日 by SIGN
やっとステンドグラスが入った。作家さんには昨年内に仕上げてもらったのに、年末年始をはさんで少し時間がかかってしまった。
これはアンの心の風景、グリーンゲイブルズの窓から見えるプリンスエドワード島の田園風景を抽象的に描いてもらった。
ステンドグラスを入れたいという依頼者の要望から、東京のステンドグラス作家さんにオーダーメイドしてもらうことになり、そのデザインについての話し合いの中で思い付いたのが「赤毛のアン」だった。
そういう経緯がなければ、「アン」は出てこなかったし、僕もきっと気付かなかっただろう。
ステンドグラスのデザインが決まってから、本体のデザインも再考に入り、図面ができたのは年が明けてからだった。
今回のデザインはすらっと伸びた直線、また重なり合う直線が見どころで、ステンドグラスも直線だけで表現してもらった。
光と色が加わると、家具も華やかに見える。
それはずっと繰り返されてきたこと
2011 年 1 月 20 日 by SIGN
壁板をフレームに貼った。ほぼ完成形が目の前に現れた。
整然と並んだ直線が美しかった。
この瞬間の前に誰もこれを見たことがなく、僕でさえ必要性と機能性と依頼者の物語といった情報しかなく、図面上で設計デザインしたとはいえ、実物の存在感を感じる時はなぜか第三者的な感覚がある。
素直に感動するのだ。
経験が浅いから?
何十年もキャリアを積むと、こういった感動はなくなるのだろうか。
様々な作業の積み重ねの末、あっけなく現れるこの瞬間。その仕組みをもっと知りたい。