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SIGNのポリシー、オーダーメイド家具の魅力

あなたと、あなたをとりまく環境を
肖像画を描くように、一つの家具で 描き出す作業
それが、僕が考える オーダーメイド家具の製作です

音の出る家具を作る時の音


クランプを外し各部ディテールの加工をして弦を張り、打面を取り付けた。
今回打面に選んだのは2台ともスプルースのミディアムだ。
アコースティックギターのボディーにもよく用いられ人気の高いマホガニーだから、それをイメージしたチョイス。マホボディー、スプルーストップ。
ギターであれば甘く伸びのある音が特徴となるマホボディーだが、カホンではどうなるのだろう。
打面を取り付けた後、弦を張らない状態で軽く叩いてみたら、思っていたより音の立ち上がりがよく、サスティーンも効いている。これが弦を張ったり人が上に座るとまた雰囲気は変わる。しかし箱自体の鳴りを確認するにはこの状態が分かりやすい。
今手持ちにオークやメイプルがないので比較ができないけど、マホガニー、これはかなりいいんじゃないかな。

午後から最後のディテール調整と仕上げ磨きをして1回目の塗装をした。
マスキングをし、打面以外に下地としてマホガニーカラーのオイルを塗った。
美しい。
マホガニーは光の角度によって発色が変わる。


そんな作業をしながら、上空を何度も通り過ぎていくヘリコプターの音を聞いていた。
行くのに十数時間かかる東北ではない、あれの行く先は、ここから車で数時間の場所だ。

再出発には何が必要で、


SIGNカホンの製作を休止してからもう2年が過ぎていた。
ということは2年ぶり?
久しぶりに見るこのクランプだらけの姿がなんだか懐かしくも感じた。
無垢板にこだわり、接合にはビスやタッカーを使わず組手にもせず、接着だけで組上げる方法を選んだ。強度を出すための補強材と木と木の融合性の高い接着剤を用いることにより、強度の確保と箱が振動してよく鳴るように。そんなことを考えた選択だった。

その結果、一般的なカホンともちょっと違う独特な音色が生まれた。


今年はプロップスフェスティバルのメンバー有志が、イベント開催までに福島へ現地視察とボランティアをしに行くことになっている。
最初僕も行くつもりでいたが、今回は見あわせることにした。
かつて僕がそんなことをしていた頃と同じ年代のメンバーが名乗りを上げ、今現地との連絡や企画を練っているところ。

どちらもその時、思考能力のすべてをそれに費やしていた。そんなことだからこそ懐かしく思うのか、また懐かしく思った瞬間に再びがなくなるのか。

その音は多分やわらかい


SIGNカホンは現在製作休止中ということになってるけど、今年のプロップスフェスティバルに向けて少しずつ作品を作ろうと考えていたらふと、カホンを作ろうと思いたった。
以前仕入れたマホガニーがちょうどカホン2台分あった。
無垢板カホンとしてちょっとだけ名が知れたSIGNカホンではあったが、あの時家具製作に専念したいという思いで製作を休止した。
在庫も全部売り切った。自分用のカホンまで人にあげた。

今回作るからといって製作を再開するつもりはない。今のところ。
ただ、こないだテーブルを作った時に、自分が持っているものを吐き出しておきたいという気持ちになったのだ。
どういうレスポンスがあるかとは別の話。

2台のカホンは特に変わったことはしないつもり。
好評だったSIGNカホン-Vを図面そのまま作ってみる。
あの頃、とにかくいい音を出そうとした試行錯誤がそこにある。
ただ今回は材料がとても贅沢。ボディーはマホガニーのなんと一枚板、内部の角材はウォルナット。あの頃はやりたくてもできなかったチョイス。

SIGNカホンを探して迷子になってる人、見つけられるかな。

SIGNの写真茶話会25を開催します。

このたび茶話会常連メンバーの、カメラマン松野幸一さんが初の個展をされることになりました。
「GANGA 〜そのボートの行方〜」

それを記念して、今回の茶話会はその個展会場であるギャラリーで行います。
その日行われるギャラリートーク、作家による作品解説に乱入?したいと思います。

日時:9月10日(土) 14:00〜16:00
場所:ブルームギャラリー 大阪市淀川区新北野 1-11-23 ハイム北野 B103
参加費:無料
※同日18時よりオープニングパーティーもあります。

フリー参加のイベントですが、先方が人数を把握したいとのことで、SIGNの写真茶話会を通して参加を希望される方はご一報ください。
sign@norioyuasa.comまで。


完成したダイニングテーブル1500×750×h710を展示しています。
8月29日〜9月9日まで

この展示期間中、現品限りで特価販売します。
通常セミオーダーで126,000円〜のところ、今回天板の材料がリサイクル材ということもあり、その分お安く84,000円で販売します。
興味のある方はぜひ現物をごらんください。
ワークデスク、パソコンデスクとしてもいいですよ。

期間中でも売れた場合はセール終了とさせていただきます。在庫確認は在庫情報にて。
売れなければ我が家のダイニングテーブルにしたいと思っています。

お問い合わせはメールにて。
sign@norioyuasa.com

朝からさっと仕上げのペーパーがけをし、脚部と天板の組み立てをした。
テーブルとして当たり前のデザインではあるが、こうして見るとなにか読むべきものがあるような気がする。
オーダーメイドの家具にはない、最近の、僕から出てくる形にはどこか柔らかいというか、強い主張はなく優しいような、弱々しいような空気が漂っている。
自分で言うのもなんだけど。僕だってこのテーブルに出会うのは今日が初めてなんだから。

作品が感情に左右される、これが個性?
デザインは情報、伝達手段、と言いつつ自分が知らず知らずに書き込んだ物語に気付いていなかったのか。

僕とは、流行に関心がなく発想も平凡で、優しく弱々しい。と書かれてある。

午後から一回目の塗装をした。

そういう体質


コストを抑えるために取り付ける脚部のデザインは簡略化しようと思っていたけど、どうもそういうことさえ出来ない体になってしまっているようだ。
組み立てが終わった円柱の脚と幕板の取合いの部分にヤスリをあてたい衝動に駆られ、結局今日はざくざくごりごり、摩擦系作業に酔いしれた。
部分的には少ししかなく、同じ形状を4か所加工するだけだったので、ちょっと物足りなくもあったが、やっぱり摩擦系はいい。

これは僕が特に好きな加工作業なので楽しそうに見えるかもしれないが、めんどくさがって嫌う人も多いだろう。ヤスリ以外の方法を選ぶ人もいるはず。

なぜか僕がやってるとなんでも楽しそうに見えるみたい。
僕が感じている楽しさに共感できるかどうか、まずそのチャンネルが自分にあるかどうかを確認してから挑戦して欲しい。

例えば、昼飯は毎日インスタントラーメン。これを何年も続けることができるかとか。

わかりやすいテーブル


天板の加工が完了し、脚部に取りかかった。
今回の脚はシンプルに幕板付きの4本脚にする。全体的にオーソドックスでシンプルなデザインとし、今後在庫を作っていく上での安価なラインナップの試作とも言える。
脚は幕板より下を円柱にしようと思っていて、少し細めの脚になる。その材をストックの材料で間に合わせるために貼り合わせて角材を作った。
唯一デザインで変わっているところと言えば、このテーブルは1500×750の長方形でありながら、3方に座る4人がけを想定しているところだろうか。

こんなにシンプルなのは物語の書き込みがないためだろう、オーダーメイドとしてはちょっと物足りないデザイン。
でもそういうものが欲しい人もいるよね。きっと。


次の仕事までに間が空いたので、以前知り合いから貰ったテーブルのリフォームをすることにした。
さてどんなのにしようかな。

テーブルと言っても元は座卓で、中途半端に古く、デザインは和風とモダンを混ぜたような感じだった。
これをダイニングテーブルにリフォームしようと前から思っていた。
天板ははぎ合わせながらも無垢だったし、そこそこ厚みもある。塗装は着色の上からこってりウレタンで、ひびが入っていた。
だからまず塗装を剥がさないといけなくて、それがめんどくさいから随分放ってあったのだ。
とりあえず脚部を外すとガンガンにダボ付けだった。反り止めはビスと鬼目ナットにボルトで、その許容範囲を越えていたので天板は反っている。
塗装を剥がすのと一緒に平面も削り出さなくては。
まずは人工の耳を切り落とした。

平面の削り出しまですると、なんとこの木は真っ白だった。
ウレタン層が分厚く分かりづらかったが、木目がケヤキに似てたのでてっきりそうかと。着色で色もケヤキの古材のようにも見えた。
これは一体何の木?(知ってる方います?)
かなりフェイクな代物。
切り落とした人工耳も、60幅の耳材(?)を両端にぴっと貼付けただけだった。

捨てるのがもったいないからといただいた物だったが、こんな分厚いウレタン剥がすのと両面平面出しで半日。
一から作るのと変わらない。
簡単リサイクルでエコロジーで節約上手…..リフォームを甘く見ちゃいけない。

ホームページが復活してから少し時間が経ってしまいましたが、この復活を記念して特別セールをしたいと思います。
と言っても在庫にある物しか売れないわけですが、SIGNのオリジナルとして製作した渾身のスツールを特価販売いたします。


SIGNオリジナル「ウィンザースツール」


5色(各色1脚のみ)
通常1脚=31,500円15,000円(税込)にて販売します。

送料は全国一律1,000円

セール期間は8月14日〜8月31日まで

在庫状況は「在庫情報」にてご確認ください。
※セール期間中でも完売した場合は早期終了させていただきます。

お問い合わせはメールでお願いします。
sign@norioyuasa.com

これが終わればようやく加工の作業は終わる。
鉄板をサンドした底板と本体の接合は、高級手工ギターに用いられるペオネスという小さな木のブロックによる接着法にした。
薄い板同士を接着しある程度の強度を出すにはこれしか思い付かない。
曲面に対し、角度の付いた平面との取合いは場所によってすべて角度が違う。ひとつひとつのペオネスを角度を合わせながら削り出していく。

そんなところのデザインはデザイナーも考えなかっただろう。
デザインと違うなんて言うなよ。

復興の狼煙が届く

注文していたポスターが届いた。

「復興の狼煙ポスタープロジェクト」

東日本大震災の被災地復興の願いをこめて、いや、同封されていた手紙には「長く険しい戦いに立ち向かう鋼鉄の意志」と書かれていた。
このプロジェクトは被災地から発信するもので、現地の広告デザイナーが企画、運営している。
写真を撮ったのは東京のカメラマンで、震災後幾度となく現地に入り各地を回って被災者のポートレートを撮影している。

web上で探せば彼等の会社名やカメラマンの個人名まで調べてアップしているサイトもあるが、プロジェクトとしてはプロジェクト名である「復興の狼煙」以外すべて匿名にしてある。


写真作品としても、最近見た中でもっとも心が震えた写真だった。
飯沢さんが言ってたように、震災後に撮影された写真も震災後に見る写真も、その意味を背負うことになる。写真だけでなくすべての表現においてそうだろう。

しかし彼等の意志は、彼等の仕事を褒めたたえることではなく、これが始まりになり波及していくことを望んでいるのだと思う。
その長く険しい戦いに、それぞれが自分にできることで立ち向かっていこうという呼びかけでもあるのだ。
このポスターを受け取ったのだから、その思いをだれかに伝えたい。

ガラス作家の恵美さんが募金箱のガラス玉を持ってきてくださった。
だいたい雰囲気はこんな感じになる。
前回作った木型が上手く出来ていたことと、図面通りの寸法でガラス玉が仕上がってきたこともあり、別々に作ったとは思えないフィット感があった。
さあ塗装まで加工作業は大詰めだ。

恵美さんと一緒に今日、大阪芸大でプロダクトデザインを学ぶ若者がSIGNを訪ねてくれた。彼のことは以前恵美さんから聞いていた。「何を考えてるかわからない」「無気力」それは恵美さんの評価ではあるが、そう聞いて想像していたのと彼はちょっと違っていた。
ちゃんと笑えるんじゃないか。いい笑顔だった。
愛想笑いかもしれない。でも初対面で彼のことを知る範囲としてはそれで十分な気がした。ルートはあると分かっただけで。
何か話したかったのかもしれない。それなら一人で来なければならない。
僕を見てどう思ったか。また会う価値があると評価したか、どうか。
どうも僕はこの年代の人間が気になってしょうがないみたいだ。何考えてるんだろうと知りたくなる。一言二言話しかけてみたが、ヤバいと思った。
今彼に共感しようとすると、自分を見失うことになりかねない感じがした。そういうものを持っているのも確か。
悪いね、今度会う時までに言葉を用意しとくよ。

今日は仕事の話を優先。

一周曲線を4周まわる

二つのリングを重ねて流れるような形を作り出す。
母親が子どもを抱きかかえる姿がモチーフになっており、それを一枚の布が包み込んでいるというデザイン。

初めに依頼を受けた時に、木の塊から彫刻するのとどっちがいいかと聞かれた。
僕の彫刻の腕なんて大したことないし、またデザインのコンセプトから考えると、薄い板が重なって揺らいでいる方がいいと思った。またこのラインのシャープさは彫刻では無理だと思う。

先端が細くなっているから強度も確保しなければならない。確かに杉の「まげわっぱ」では無理だろう。
5ミリ厚のウォルナット二層曲げはかなりの強度が出せたと思う。

まあ、これも木工。
やってればいろんなことに出くわすもんだ。いろんなことを考えさせられる。

友人から頼まれていたイージーチェアを納品してきた。
分かる人が見ればこれはあの有名なデザイナーのデザインした椅子であることに気付かれるだろう。
微妙なディテールのアレンジはあるけどほぼ同じ。
これはある意味ルール違反だけど、よく似てる物を作って自分の作品とするのとは違うと思っている。

気にする人へ、プライベートな依頼でこれっきりなので許してね。

最初この椅子を僕に作って欲しいと言われた時は、完全コピーなんてするつもりはなかったし、その時思い描いていたアレンジもあった。
そのつもりが、サンプルで貰った写真からとりあえず図面を起こしてみると、そこには美しい数字の結界があった。
さすが、すごくよく考えてある。しかもデザイナーと職人が話し合いながらせめぎ合いながら練り上げていった跡も感じられた。
それに彼より技術のない者が下手なアレンジを加えるとすれば、途端にバランスを崩してしまいそうだった。
どうしようか迷う前に、僕はこの椅子を作ってみたいと思ったのだ。図面でトレースする以上にもっと彼の考えを知りたい。

こんなことを思ったのは初めてだった。
オーダーメイドでお客さんのために一点もののデザインを考えるのがSIGNの売りである。
誰かの真似であったり、何々風というのもできるだけ避けてきたつもりだった。
友人からの依頼ということもあってか、今回だけは勉強したくなったのだ。

そう思いながら作るのは意外や楽しかった。
50年以上前に考えられたデザインから、そこに刷り込まれた手紙を読み解くような感覚があった。
当時の職人と同じように、対話しながら作っている気持ちになっていた。
やはりデザインとは様々な情報が詰まったメッセージなんだと思う。
使われることでそれらは伝わるべきだが、実践して作ることによってしか解らないこともある。
そんな気がした。

友人はこの椅子の出来にとても喜んでくれた。

形を考える人も泣くのか


2ヶ月の間にいくつかの仕事をこなしていた。
ここにそれらをアップすべきか、それとも消滅していた痕跡として空白にしておくのもいいかと思う。

その結論は先送りにして、今やっている仕事は以前作ったことがあった「母子家庭のための募金箱」だ。
とある製薬会社がクライアントで、東京のデザイン事務所からの仕事だった。
前に作ったやつが好評で、また追加で注文があったのが年の始め頃。そしてあの震災の後納期が8月に延期され、最初2台の注文だったのが先日1台に減らされた。

ウォルナットの5ミリ厚の板を写真のように曲げて作るという特殊な作り方で、曲げ木職人かギター職人に頼めばいいものを、あちこちで断られて巡り巡って僕のところに転がり込んできた仕事だった。

なかなか泣ける仕事。
こうして少しずつ曲げては固めてを繰り返し、輪っかを作った後削りこんでいくという凝った作りになる。
デザイナーはどんな人なんだろう。
「母子家庭のため」に僕に作らせる意味まで考えているんだろうか。

僕はここにいます

2ヶ月ぶりにホームページが復活しました。
サーバーのトラブルでサーバー会社の対応もわけわからず、もう諦めかけていたのに。

今後のこともいろいろ考えさせられた2ヶ月でした。
しかし、戻されたということはやはりここにいろということなのかもしれません。

突然の消滅で心配してくださった皆さんに、お詫びとお礼を言いたいと思います。
思いがけず起こったことで、たくさんの方が僕を見ていてくれたことを知らされました。
今さらながら、僕が家具を作ることで何を伝えられるんだろうと思います。

以前にも増して非常に厳しい状況ではありますが、またSIGNを送ろうと思っています。
よろしくお願いします。

これも時間の使い方か。


時間が無い時にはすんなりできることも、ほかのことが停滞している時にはなぜか信じられないくらい時間がかかってしまったりする。

次の作業が始まる前にと手押し鉋盤の刃の交換と調整をしたのだが、なかなかできなくてまいってしまった。
回転するドラムに3枚の刃をセットする。要はその端から端までの高さをゲージを使いながら0.01ミリ単位で同じ高さに調整するということ。
そしてそれを3枚とも同じ高さにする。
ゲージがあるとはいえ固定のボルトの締め方や順番で誤差が生じるので、結局は勘を頼りにやるしかなくて、完成はつまり運みたいなもの。
お金がある人は機械屋さんに任せるんだろうけど、自分でできると思っているお金のない人は自分でやる。

丸一日かかってしまった。
Salt & Uribossaの「風のメロジア」が何周回ったことか。
久しぶりのヘビーローテーションで、このアルバムのすごさを再認識した。

日曜日、オーディオラックのお客さんからもう一度打ち合わせをしたいという依頼があり、行ってきた。
こないだの打ち合わせは奥さんだけで、ご主人の話は奥さんから聞いていた。もともとは奥さんからのご注文だったが、ご主人に関するお話を聞いてからはなぜか、デザインにご主人を意識したものを多く盛り込んでいた。
つまり、僕はご主人に響いて欲しかったのだと思う。
そのご主人が会って話を聞きたいと言われたので、お仕事がお休みの日に伺うこととなったのだ。

図面を見ながら、そのデザインに込めた思いを説明させていただくと、そのデザインの一番の見どころをご主人に気に入ってもらえたようだった。よしっ。
僕もこの機会にと強度的な部分で変更点を提案し、またあちらからも寸法面で変更箇所があり、図面は一から書き直すことになったけど、今日書いていて第一案よりさらに数字のバランスがよくなっていることに気づいた。

こんなこと、手書きで図面を書く人にしか分からないだろうけど、バランスとは数字によって形が定まっていく感じかもしくは、バランスを数字によって証明するような感じ。
現れた瞬間、きもちわるっ、ていう感じ。

今日は午前中図面を書いたり送ったり、その後次の仕事に向けて手押し鉋盤の刃の交換調整などをしていたら、昼過ぎに意外な来客があった。

学生時代僕は中古バイクのオークション会場でバイトをしていたことがあった。バイク寮とも言われていた学生寮の仲間といっしょに、週一回。会場には西日本各地からバイク屋さんが集まり、何百台ものバイクが一日かけて競り落とされていく。その会場への引き回し、トラックへの積み込み作業のお手伝いがバイトの仕事だった。
給料は日当制なので働いた日にすぐ金になり、その日の帰りにみんなで贅沢しようとラーメン屋に行くのが定番だった。
当然そんなバイトに来る奴らはみんなバイク好きでそれぞれ個性的なバイクに乗っていたが、原付から大型まで駐車場内だけではあっても色んなバイクに乗れるのが楽しみで、自分の順番が好みのバイクに当たったりしたらかなりテンションが上がり、また乗りたいバイクがあれば友達に変わってもらったりもしていた。
そんなバイク青春時代のバイト仲間が二人、SIGNへやってきたのだ。20年ぶりくらいだった。最初誰だかわからなかった。
一人はスーツを着ていて、一人はラフなカジュアル。そして僕はいつもの作業スタイル。どう見てもおかしな同い年のおっさん3人の再会はまるで異業種交流会。僕一人が久しぶりで記憶喪失になったみたいな感覚だった。
話しながら少しずつ蘇ってくる二人の記憶をたどりながら、昔の顔と今の顔、あの時のあいつと今の彼らがゆっくりと重なってくると妙に存在感が現実化してきて、一杯のコーヒーを飲み干す頃には学生の頃のように思いを語ったり悩みをぶちまけたりしていた。
ものすごく久しぶりなのに、話題はなぜかタイムリーだった。なんだか励まされてしまった。

なんだこの不思議な再会は。
なぜこのタイミングで。
学生時代の自費出版写真集を買ってくれたそいつが、久しぶりに僕の名前を検索して見つけたと言う。
おとといおそるおそるfacebookに登録してすぐの出来事。
また会おう連絡取り合おうと約束して彼等は帰っていった。


新しい仕事、オーディオラックがスタートした。今日図面ができあがった。
テーマはフレームの向こうの記憶、思い出。
音楽好きで、かつて80年代ロックに夢中だった奥さんと、車が好きでフランス車を乗り継ぐマニュアル派のご主人のお宅に、テレビも収納できるオーディオラックを作らせていただくことになった。
薄型大画面テレビやオーディオ機器はもちろん、奥さんのCDコレクションやご主人のミニカーコレクションも陳列する。
主役たちを邪魔しないように、しかし主張のあるものにしたい。

打ち合わせの際、おおまかなデザインの方向性は説明させていただいたが、必要な収納スペースと全体のバランス、細部の作り込みを考えるていると、数字との戦いで頭が煮詰まってきた。そんな時、今の僕には15分間の逃避(リフレッシュ)メニューがある。

工場から5分ほど走ったところに、あまり人の来ない静かな池があり、そのほとりに一日木漏れ日が差しているほぼ全天球の樹間ドームをみつけたのだ。
ステージのようなその場所にバイクを止めてひととき。
磨いてやったハンターカブはまた土と緑がよく似合う。



時速40kmの心地よさ。

こんなに近くに

SIGNの近所で見つけた写真ギャラリー「ら・しい」はもうできてから2年以上が経つとおっしゃっていた。なのに今まで知らなかったのは、この通りは道幅が狭く、車で行くには近すぎて歩いていくには少し遠いところだったし、当麻寺方面には特に行く用事もなかったからだ。
バイクをハンターカブに乗り換えて、近辺を散歩ライドするようになったから出会えた場所だった。ふとしたことで立ち止まることができるのもミニバイクのいいところだと思う。

入江さんの写真展に惹かれ、ちょっと覗いてみるだけのつもりだった。
写真のギャラリーに入るのに、写真の話をするつもりがなかったというのは矛盾しているけど、木工の道を志してからはいつもそんな矛盾を抱えている。
本当に見せていただくだけのつもりだったのだが、オーナーの方が気さくに話し掛けてくださったので、ついいろんな事をしゃべってしまった。
入江さんの作品がなぜここで見られるのかという話から始まって、ここにギャラリーを作られた経緯や、オーナーの方の経歴の話。そう、オーナーの川畑さんは大阪で活躍されているプロの写真家で、JPS(日本写真家協会)とAPA(日本広告写真家協会)の会員でもあるコマーシャルフォトグラファーだったのだ。だからこんな田舎で古民家を改装したギャラリーであっても、設備は本格的でしかも写真家の作品を展示されているのだった。
ご自身の生い立ちに関わるこの奈良という場所で、その土地に密着した活動の拠点としてギャラリーを開設され、以来地元のアマチュアカメラマンの拠り所となっているらしい。

また今までの写真家としてのお仕事の中に講師の経験もおありで、一緒に仕事をされた方々の中に僕の知り合いの名前も出てきた。
そうなると、僕の経歴も話さざるを得なくなり、ちょっと覗くだけのつもりが腰を据えて話し込むことになってしまった。
僕を知る人が聞いたら、ああまたやってる、と思われるんだろうな。

そんなオーナーさんとの話をギャラリーの奥で作業をしながら聞いていた人がいて、その人が途中から加わってさらに話は盛り上がった。
その人は近くの造園屋さんで、このギャラリーの常連さん。その日も仕事の途中でちょっと寄りましたみたいな作業服姿で、自分の作品のプリントを焼き増ししふち落としをされていた。
話の流れから少し写真を見せていただくことになり、少しだけコメントさせていただいた。

この方々と、このギャラリーと、これからどんなお付き合いになるかはわからない。
僕という人間は、自分から関わろうとするより、使われてなんぼだということも知っている。
誰がどのように扱うか、その時それを拒まないようにすることも前へ進む方法だということを知っている。

総じてカブのはなし

今日は今年度の木工の授業の打ち合わせで大学へ行ってきた。
こんな時こそカブで行かねばと、仕事の合間にちょこちょこ磨いて整備してきた愛車に乗って。
後ろの荷台には今年の課題のサンプルとして、シンプルな角脚框組み4本脚のスツールを積んでいった。そういうことができるのもカブのいいところだな。

今年の授業で僕が考えていたのは、学生に少し考えて作らせること。ただ技術を教えるだけでなく、その覚えた技術をどう使うかまでを考えさせる授業にしたかったのだが、担当の先生によると、今の学生には高度すぎるということで、やっぱりサンプルどおりのものを作らせることになった。
学生の現状を知る先生の言うことだから本当なんだろうとは思うけど、デザインを学ぶ学科なんだからやっぱりデザインしたいんじゃないのかなあ。
非常勤だから出過ぎたことは言えません。

打ち合わせが終わり、そしてまたバイクで帰る、のが楽しくて、ついついあちこち寄り道をしてしまう。
細い路地、農道、4輪不可の踏切をわたり、なかなか家に着かない。
帰る前にこないだ見つけた絶好の木漏れ日ポイントで一服しようと当麻寺付近の路地を走っていると、今まで気づかなかったところに写真のギャラリーを見つけた。
それがなんと入江泰吉の作品展をやっていたので、なんでこんなところで?と思って立ち止まり、ふらっと入ってみた。すると…..

ここからはちょっと面白い話なのでまた今度。

カブに乗ってるといろんな発見があって楽しいなあ。これがカブライフというのかなあ。

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