次の仕事の準備をしようと、朝から資料を集めたり、調べものをしたりして、さあやるかと思ったら電話が鳴り、知り合いの子ども写真スタジオから小物の依頼があって、おっとそっちが先かと資料を片付けて材料を準備しはじめたら、見なれたキャンピングカーが工場の前に停まり、看板犬モコが騒ぎ出した。
いろーんな意味でいつもお世話になっている、理想建築工舎CRAFTの堤さんだった。
今日堤さんが来ることはわかっていたが、何時に来るかは聞いてなかった。いつも突然来てしゃべりたおして、またはギター弾いたり歌ったりして帰っていく。工場を移転してからは少し足は遠のいたが、前の工場は奈良県の背骨とも言われる24号線のそばにあったので、仕事で毎日爆走キャンピングカーで走り回っている堤さんはよく、SIGNを休憩所のように立ち寄る場所にしてくれていた。そんなこともあって、僕と堤さんの関係は深まり、仕事の話はもちろん、SIGNカホンへのアドバイス、材料提供、そして何より今のこの場所への移転に関しても大変お世話になった。大恩人である。
なんて書くと、しょうもないこと書くな、と言われそう。なんの気兼ねも遠慮もなく言い合いができる人なので、こちらも一緒にいて楽だし相談もしやすいし、今から行く、と連絡があっても特にもてなしの準備をすることもなく、普通に仕事をしているところを当たり前のように中断させられるから、今日も待つともなく仕事をしていたというわけ。
お互い話し出すと数時間があっという間に過ぎてしまう。
今日だって本当は、月末に二人の共通の知り合いである音楽家の丸山さんがロシアから友達をつれて奈良へ来るので、案内も兼ねたホスト役を堤さんが頼まれ、僕も巻き込まれ、それでどこへ連れて行くだの何食わせるかだのを話し合うために来たはずが、そんな話はそこそこに、いつもの調子で話し込み、気が付けば3時間が過ぎていた。
こんな打ち合わせでいつも最終的にはちゃんと結果を出せるので、僕らはプロフェッショナルだ。めちゃくちゃ真剣に話をしていたくせに、堤さんの、どーにかなるやろー、で話は終わる。まじめなくせにそういうスタンスはお約束なのだ。
さて、結局ロシア人に関する打ち合わせは、別れ際の二こと三ことで終了。まさに極秘会談のプロ並みだ。