タモ集成材のテレビボード
W2000×D650×H600
材質:タモ集成材、ホワイトアッシュ
塗装:オイル、ワックス、着色オイル(白)
ストーリー
新築の家なら、その家にあう家具を探すのも家を建てる楽しみの一つだと思う。
その費やす時間の中で、一番最後の行程になる家具選びは、それまで綿密に計画し夢見てきた家に、足を踏み入れて初めてイメージが湧いてくるものでもある。推理小説のように。
若い夫婦だった。土地の購入から家を建てるということをもしできるならば、それはもちろん、経済的にも生活を考えても、若いうちにするのが理想ともいえる。
子どもを産み育て、やがて老いていくまでを見据えたあらゆる条件を満たす環境に巡り会えたなら。そんな幸運を誰もが夢見るはず。
彼らの家は和歌山市の市街地から少し離れた郊外にあり、周りには緑も多くとても静かなところだった。細い路地には古い家並みも残っている。そんなところに、ひっそりと清潔な白い新築の家が建っていた。
周りの景色から比較すると、谷あいのその場所にだけ光が差しているかのようで。
庭になるはずの家の前は、まだ工事中で地面が土色なだけに余計にそう感じたのだろうか。
そして現代的な外観に対し、中に入ってみると、床、柱、梁、建具、階段など、無垢の木をあえて露出させて主張するような作りで、しかも白い。
そう、そこが今回のポイントだった。
彼等の木の家に住みたいという思いと、白を基調とした空間で暮らしたいという思いが形になったのだった。
だから、壁はもちろん白で、露出した木部はほとんどが白のステインによって着色されていたのだ。そしてそこに置く家具もそういう質感のものを求めているのではないかと感じた。
僕にこの話をする前に、知り合いの家具屋に相談したところ、構造はフラッシュで白は白、でも値段はかなり高かったらしい。
打ち合わせの時、家を見回すと、集成材を多く使っていることに気が付いた。もちろん白く塗られているがタモのようだ。地の色が少し浮き上がるくらいの着色で、階段、戸枠、窓枠、ニッチの棚板など。ふうん。
じゃあ、ということで同じ材と仕上げで作ろうということになった。問題は同じ色になるかだが。
仕様についてのリクエストは、まずオーディオ、チューナーなどが入るところは、ダンパー付きの倒れ戸。大きな引き出し3つ。そしてパソコンラックも兼ねた作りで、マガジンラックらしき前板を引くとプリンターが乗ったキャスターワゴンが滑り出てきてその下が用紙入れになっている。その横はタワー型のパソコン本体を収納するスペースで、本体はキャスター台に乗っている。という仕組み。
で、天板くらいは無垢板にしましょうということで、予算で収まりなおかつ白いアッシュにした。
完成してみると、たしかにこんなのは売ってない。
ただかっこいいデザインで、シンプルで。というのは意外と誰でもできるし手に入りやすいのかもしれない。
しかしここはこうして欲しい、というのがデザインの話なのか、機能の話なのか、それともどちらもか。
それに応えるのがオーダーメイドだとしたら。
家具屋には探偵の才能も必要だな。