森が見た夢:3章あらすじ
2023 年 3 月 1 日 by SIGN
第1章2節の続き。章と彼の友人はアーケード街を人混みをかき分けながら歩いていく。通りの両側にある店を眺めながら、章はその明るさになぜか違和感を感じていた。明るさとはそれぞれの店が放つ照明の光でもあり、その光にこめられたメッセージでもあり、そんな明るさを押し付けられるように感じた。
二人はそこから一筋入った薄暗い通りにある行きつけの店に向かう。店の名前は『鉄板焼すみれ』お好み焼きの店だった。女主人が一人で切り盛りする最近では珍しい『頑固な店』だったが、店内は常連客で賑わっていた。
そこで友人は章の悩みを聞き出そうとする。しかし、章自身は相談したいことなど思いつかず、店の女将から仕事のことを尋ねられても自信を持った答え方をする。今の状況に不満があるようには見えなかったが、彼の友人は何かを感じ取っていた。
会話の中で度々出てくる月に関するこだわりや、学生時代の相棒と比較して自分を卑下する言い方に、友人は章に「今の話を聞いていろいろ言いたいことはあるが… 」と語り始める。「お前もそっち側の人間だよ」と。
学生時代から章を知る友人は、今の章は合理主義の『ふりをしている』だけで本当はもっと別の理解の仕方をする人間だと思っていた。『ふりをする』のに疲れてわからなくなり、自分を含むこの当たり前の世界にさえ苛立っているように見えた。
そして友人は章に言った。「もういいよ、やりたいことやれよ」
そう言われて、あらためて自分の欲求に気づいた章は、祖父に会いそれを確かめようと決意した。