いよいよセット最後のパーツとなる引き出しの箱を作った。これで木を切る作業は終わり。
ああ、山のようにあった材料を使いきった。
明日は箱の仕上げと前板を仮で取り付け、キャスターも付ける。それができたら一度納めて確認し、すべてを分解する。塗装をするためだ。やっと完成が見えてきたぞ。
二段ベッドというのはいろんなパーツの複合体で、ひとつひとつが一仕事と言えるものだった。
感覚として家を作る作業に似ていた。僕は開業前に少しの期間大工手伝いをしていたことがあり、自分でも何度かリフォームの仕事を承けていたこともあった。今住んでいる家のリフォームも工場も友人に手伝ってもらいながら自分でやった。
そんな時大工の友人によく「もっと適当にやれ」と言われたことを思い出す。芸術でも作品でも家具でもない。丁寧にやり過ぎだと。
もっとも、家具のことしか知らないわけだから大工のクォリティーなんて知る由もなく、家の構造を知らないために自分のやっている仕事が最終どうなるかも分からない。最初の頃はいちいち考えながらやるのでペースも上がらなかった。やたら疲れるばっかり。
ひとつの現場が終わる頃には、もう二度と大工なんてやるもんかと思うのに、暫くするとまたやりたくなってくる。家具とは違うあのダイナミックな作業と、人が入れる構造物を作る楽しさ、いろいろな生活のための設備が取り付けられて電気がつながったときのまさに命が吹き込まれたような感動。家具にはない面白さがある。
そんな大工仕事の面白さと家具のクォリティーを許されるものがあるとしたら、二段ベッドはそのひとつなんだろう。
コストを下げるために大工さんが新築の家で家具を作るケースはよく聞くが、その逆はあまり聞かない。
もっと金を突っ込んでもいいなんて言うお客さんはまずいないだろうから。
しかし、こないだの堤さんの時給計算によれば大工さんの最低賃金より安いので逆にお得?かかる時間さえ気にしなければ。いやいや、そんな仕事がしたいんじゃない。