とりかかったのは「本のためのイージーチェア」。机の上に置いて使うブックスタンドなのだが椅子の形をしたもの。
なぜ?と最初は思ったけど、依頼者とメールでやり取りしながらその本気具合を感じ、もう何も迷いはない。こちらも本気で立ち向かうのみ。
手書きで描かれたイメージスケッチを図面におこしながら細部の寸法や角度を決めていく。スケッチのバランスを崩さないように、また構造上の無理がないようにアレンジする。と、絵を見れば簡単そうに見えても、そのまま数値になおすとかなり複雑な形をしていた。そこから比率をシンプルにしたり、角度に統一感や相関関係をもたせることで安定感が見えてくる。気が付けば図面は書き込みの数字だらけになっていた。
図面を書きながら頭の中では加工法まで考えるので、一脚作り上げたような感覚がある。
多分出来上がってみればどこにそんな計算があったのかと思うんだろう。そういうものになると思う。
シンプルなものほど隙のないバランスが求められる。直角で交わるところが少ない直線の構成は、実は曲線で逃げるより難しい。角度をうまく加工しないとぴしっと決まらないだろうな。
本のための椅子ではあるが、本当の椅子を設計するのとなんら変わりない。小さくても加工の工程で手を抜けない。
さあて。