僕にとても大事な言葉をくれた人
2009 年 1 月 25 日 by SIGN
今日は明日香にあるギャラリーカフェ「夢灯り」に行ってきた。
僕が昔お世話になった方の一周忌のイベントに。
高内良叡さん。木工もする彫金アクセサリーの作家であり、明日香の農村、棚田の風景を守る活動をされていた方だ。
僕が木工家として独立してすぐの頃、技術は身に付いたものの、どういうものを作っていけばいいのか迷っていた。それとまた、自分のスタイルというものが欲しくてたまらなくて、悩んでいた時期でもあった。
そんな時、僕はとあるNPOで知り合った高内さんを訪ねて、彼と奥さんが経営する「夢灯り」へ行ったのだった。
そこで、今思えば本当に失礼な質問であったのだが、僕は高内さんに、彼の作品を前に聞いたのだ。
「僕は今、作品を作ることから離れていて、作りたいという欲求こそあれ、何が作りたいのか分らず、しかし、その方向性のようなものを強く求めていますが、高内さんは自分が何を作りたいのかが分りますか。」
そんな甘い質問に高内さんは、
「あのね湯浅君、ものを作るというのは、自分が何かを作り出すというのではなく、かかわりの中で生まれてくるものだよ。」と答えてくれた。
それを聞いて僕は、目の前の霞が晴れるような気がした。こんな簡単な言葉で、自分で勝手にこんがらがっている僕を解き明かしてくれるなんて。
それ以来、僕の座右の銘ではないが、この言葉が、すべてのアート、すべての作品においてのキーワードになっている。とても大事な言葉だ。
そんな高内さんが去年、長い闘病の末亡くなられた。
僕はその言葉に対する感謝の気持ちもうまく伝えられないままに、彼を見送った。
しかし僕のような、彼に感謝する人、彼を愛する友人たちが集まって、にぎやかに彼を偲ぶ会が幾度か開かれ、今日も高内さんの誕生日に「ハッピーバースデー」を歌って一周忌を迎えるイベントがあったのだ。
この世からいなくなってもなお、こうして友人たちに愛され続ける人って。
「今そのへんに来てるから」って、すてきだな。