また、初めて乗るバイクのように
2018 年 3 月 24 日 by SIGN
最近バイクに乗らなくなっていた。
仕入れてからコツコツ外装のリフレッシュをしてきたGSも、いざ乗るかとなると気分が重かった。
今までどんなに他に削がれることがあったとしても、バイクだけは自分の軸として存在していたはずなのに。
あの日以来自分を信じることをやめ、与えられることを頼りにただ受け入れ、求めることさえ関心がなかった。
しかし、奪われ続けることや自分の力を問う誘惑に晒され続けることは確実に消耗することだった。まさか、バイクに対する熱まで冷めるなんて予想もしてなかったが。
車で行くかギリギリまで迷って、今日はGSで行くことにした。
知り合いの福祉施設の主催でイベントが開催されるのだ。
木工を指導している彼もバイク乗りで、毎年ラリーに出場するほどのバイク好きだった。
僕がビッグオフに踏み切ったきっかけも彼で、愛車はヤマハのテネレ。一緒にラリーに出ようと前から誘われていた。
今日も会うとその話になったが、まだそこまで僕の気持ちがついていかない。ほぼ初めて乗るのに近いGSの感触を、行きの高速で探っている段階。
GSの高速安定性と、OHVフラットツインの振動は優しかった。
憧れていたバイクだったけれど、正面から向き合って好きだと告白できるほどまだ知らない感じ。そんな距離感を味わいながら奈良の道を1日走り回った。
彼のイベントに参加するという、今日本来の目的が薄れてしまうほどに。
イベントはそう、プロップスフェスティバルを思い出させた。
しかし彼はこれを本業の仕事としてやっているのだ。そんな生き方もあるんだな。
知的障害者の就労支援施設でありながら、しっかりした技術で公共の家具什器の仕事も請け負い、最近このイベント会場である旧幼稚園を借りて地元の小学生の放課後デイサービスも始めたらしい。
そしてこのイベントは地域とのつながりという意味もあり、村の人や天理大学の学生もそれぞれ一役担っている。
彼のまっすぐな眼差しは、明確なベクトルを持ち、前へ、前を向いて生きていく確信とともに。
イベント半ば、走りたくなってきたので彼に別れを告げ、またGSで走り出した。