久しぶりに自分の工場で作業をした。独りで。
最近は土日と言ってもほとんど休日ではなく、僕が背負っている様々な役割のために、独りの時間というのはまさに時間単位分単位でしか持ち得ない。本当に生活が変わってしまったんだな。一年前には思いもしなかった今の状態から以前の生活へと一日だけタイムスリップしたかのような感覚と、しみじみとやはりこの場所で仕事をすることの幸福感を感じていた。
確かに、独りで何かものを作り出す作業に没頭することは、僕には向いているんだと思う。向いていると自分でそう思っていた。そしてそれを、およそ一年前、手放そうと思った。その後めまぐるしい変化が起こり、今の僕がいる。
それに踏み切る不安と期待を、師匠の永田さんにとある席で相談をした。仲間もいた。そのとき、師匠をはじめみんなの意見は同じで「やったらええ、やれやれ!」だった。長年続けて来た家具屋の仕事を辞めようと言うのに、少しでも永田さんの残念そうな顔があったら考えるつもりでもあったのに、その反応は真逆であった。
そんなふうに僕も生徒たちを応援できるだろうか。
体に馴染んだ機械で作業をしながら、懐かしささえ感じつつまた、戻れないという実感もあった。
こないだのプロップスフェスティバルのミーティングで、永田さんからカホンを作ってくれと頼まれた。何度もこのブログでカホンは製作休止宣言し、今や公務員として職務専念だって言ってるのに、おかまいなしのオファー。そんなこと言うとまた頭が固いだの真面目すぎるだの結局こっちもめんどくさいから断りようがない。
というわけで、ほとんど無理矢理時間を作り、112台目のカホンを作ることになった。
おかげで、こんなに良い時間となったのだ。
このカホンはプロップスフェスティバルで永田さんの息子のバンドが使用することになっている。叩くのは女性。それ用の注文だったが、今度いつ作るか分からないので、サイズは贅沢な大きめにした。合板の取りが悪く、今までに3台しか作ったことがない大きさだ。
たかが箱だけど、久しぶりに作るとなかなかいいもんだな。