写真館の絵を納品してきた。
早速壁にかけてみようということになり、「ここはプロにおまかせします」と言われ壁にヒートンを打ち、かけてみる。
プロ?まいいか。
壁にかかって離れて見るとまた印象が変わる。なんだか素人の絵には見えないのだ。
依頼者のご夫婦からも感嘆の声があがった。絵を見ながらこの絵の説明をあらためて聞くと、この絵を描いている先代の姿が見えたような気がした。
歴史のある写真館を半世紀以上守り続けた先代のおじいさんも、この絵を描いたときはまだお若かっただろう。当時は写真を撮ること自体が高度な技術を必要とした。それを職業にするということは専門技術者としての誇りもあっただろう。
写真は一般的な文化として定着し、スタイルは変われど、その後何十年経ってもいまだに写真館業界は成長をしているのだから、先代には先見性があったと言える。
本当は絵が好きだと言っておられたそうで、それを聞くと頑固で偏屈な写真館のオヤジだったという話と混ざって、この方にあった苦悩を勝手に想像してしまう。
戦後の日本の印象派に影響を受けたような絵をさらっとベニヤ板に描いて、近所の小学生が描いたのだと言いながら家に飾っていたのだという。
その後ずっとしまってあったその絵は、また娘の手によって引っ張り出され、長年過ごされたその店の壁にかけられた。