納品して比較されるもの
2013 年 6 月 25 日 by SIGN
大学へ白と黒の椅子を納品してきた。展示する場所はエントランスホールの正面奥、リートフェルトのオリジナルの横だ。
まさに比較するための展示。
流し見るだけでその違いに気付くことは難しい。配色を変えたことが意外にもインパクトが薄かったように感じる。まるでオリジナルのバージョン違いのようにも、試作品かヴィンテージっぽくも見える。
それだけオリジナルに存在感があるということなのか。それとも…
それについて依頼者である先生と椅子を前にいろいろ話をした。今回一番のアピールポイントだった三本組木の接合箇所がいろんな意味で日本的だということ。
技術的には複雑で精密な仕事であっても、完成すればそれは内側に隠され、結果地味になってしまう。もしそれを主張するとしたら、分解する行程を見せ、ひとつひとつのパーツを眺めさせるしかなく、そしてそれは分解された状態では何の役にも立たない木製品でしかない。
イモ付け脳天ビスでビス頭も隠さないことがデザイン的に許される時代に、あえて職人の技を使った家具によって主張するもの。それを残さなければならないという思いと、残すためにはこのご時世だから、職人に生活苦を強いることにもなる。職人技は職人技として、やはり作り手は新しいものを生み出していかなければならないんだと思う。
やっぱりね。
椅子の角度の違いを先生のゼミの学生に体験してもらった。
先生が一人一人にどちらが座り心地がいいかと聞いていた。その答えはほぼ50/50だった。
座り心地の評価はなかなか難しい。その椅子に座る時の用途をイメージしてしまうとそれに対する評価となる。
オリジナルが用途をあえて無視したコンセプト自体が作品であるのに対し、先生が設定した角度は用途を意識したものだからだ。
組木と角度の二本立てのリデザイン。教材として役立つことを願う。