背板と座板にナットを仕込み、仮組みしてボルトで固定してみた。
オリジナルと並べてみなければイメージが同じなだけにあまり変わってないように見える。しかし実はこの二枚の板の角度は変更されている。
オリジナルがかなり寝た角度であるために実用性を考えると用途が限られる。テーブルと組み合わせて使うような椅子ではなくイージーチェア、安楽椅子の部類である。そこをあえてリデザインの変更箇所として依頼者である大学の先生は設計されたようだ。図面では背は少し立たせてあり、挟み角は狭められていた。
塗装前だから注意しながら試しに腰掛けてみた。やはり予想通りの座り心地だった。
オリジナルはその角度から作者の思いが伝わってくるような座り心地であり、なぜこんなに寝ているのかと考えさせ、同じ家具を作る者には問いかけるような言葉がある。
完全な平面はそれだけでは体に触れると固く、座らなくとも見た目にも固そうに見える。しかし実際にそれに座るとその意外さに驚かされる。考え抜かれた体重の分散。その角度に身を任せた瞬間にのみ体感する不思議な包容感。まさに重力や人間工学を学ぶための教材であり、椅子を設計するためのプロトタイプそのものが作品になっているとも言える。そんなものが100年前に。いや100年前だからこそ意味があった。
塗装をするためにまた分解していると来客があった。
今は家業を継いで自転車屋さんになった兄弟子の吉田さんだった。なんと古い型のサンバーに乗って。
珍しい緑のメタリックはオリジナルで、4WDのディアス。こいつを引き取りに行ってきた帰りだという。
ずっと欲しかったサンバーを探しまわってやっと手に入れ、うれしくって僕に見せに来たというのだ。うーんサンバー好きってねえ。
たしかに最終型でこの色があったらこれにしてたかも。いいなあ。
コーヒーを飲みながらサンバー話と近況報告、またこんなことも聞かれた。
「湯浅君、なんぼに(何歳に)なった?」
「44歳です。」
「そやろ、俺ももう47やで。47言うたら俺が永田さん(師匠)とこに訪ねていった頃の永田さんの歳なんや。」
「ああ、そう思ったらなんか、」
「せやねん、感慨深いというかいろいろ考えてまうやろ。」
時代が違うとは言え、あの頃の師匠の仕事ぶりを思い出すとどうにも追い付けそうにない。何やってんだ俺。
兄弟子が帰ってから一回目の塗装をした。
でもこんな仕事を僕と同年代の師匠はしなかっただろうし、これを見たら師匠は絶対言うだろうと思う、自信がある。
「うわっめんどくさ!」
昨日は突然すまなんだな。あれから外環を暴走し、夜はいかんでもええ買いモンに行き、帰宅後は取説を眺め...朝4時に目覚め、市内を駆け巡っていました。その節はいろいろアドバイスありがとう、時間ができたらドライブでもいきましょう。ではまたネ。。
わかりますその気持ち。僕も納車してすぐなぜかサンバーで峠を攻めに行きましたから。
きれいな緑ちゃんを大切に。それと、二枚目のCDも聞いて下さいよ。