2脚分の背板と座板を削り出すのに昼過ぎまでかかった。背板はその幅の一枚板があったのでそれを使い、座板は二枚はぎにした。
どちらも30ミリの板から削りはじめ、15ミリまで落とした。それでも薄いと思われるかもしれないが、オリジナルはなんと10ミリなのだ。9ミリのMDFボードに特殊な塗装をして仕上がり10ミリ、その塗装により強度の確保と変形を抑えていると思われる。それに対しこちらは無垢板なわけで、どこにも保持されていない状態の大きな平面は必ず反るし、さらに薄ければ湿度温度の影響を受けやすい。15ミリでもたぶん扱いが悪ければ反るだろうし、二枚はぎは波打つだろう。むしろなぜここに無垢板かと思う。
オリジナルのデザインコンセプトにおいてはここは10ミリであっても厚いんだと思う。ただ二次元的な平面に腰掛け、もたれるということをしたかったんだと思うから。厚みがあればそれは直方体、三次元だ。
そうだったとしても、それを可能な限り平面に仕上げないとさらに意味から外れてしまう。15ミリに落とすまで慎重に平面を作りながら削る。そして出来上がった板はさん積みして30分ごとに裏表を入れ替える。はたして安定してくれるだろうか、いや、展示場所でまた変形は起こるはずだ。
削るのが終わる頃、彫刻家の村林君から電話がかかってきた。「今から出ます。30分以内に着きます。」
村林君のアトリエは大阪市内だし、30分ってえらい自信だなと思った。高速をバイクで飛ばしてくるとか、まあ彼ならあり得るか。と思っていたら随分早く彼等は到着した。独りではなく村林君の知り合いの方と一緒だった。
その方が木工旋盤について教えてほしいということだった。障害者の作業所で旋盤を使ったものが作れないかと考えているそうで。でもなぜ僕に?
実演しながら話をしていると、アスペルガーの人にいいのではと計画されていたらしい。
ああ〜、
それなら大丈夫、好きなひと絶対ハマりますよ。僕が保証します。
木彫のプロである村林君にもちょっと触ってもらったが、しゅるしゅると楽しそうに削っていた。