毎年後期の授業として木工を教えに行っている大学の先生から依頼を受けた。
先生のデザインの研究として、あの有名なリートフェルトの「赤と青の椅子」を日本の組木の技法を用いノックダウンタイプにアレンジするというもの。
オリジナルはほぞではなくダボを使った接合であるために一見どうやってくっついてるの?と思わせる面白さがあり、その接合法が彼のデザインに自由をもたらしたとも言われる。この椅子の特徴的なキーポイントである。
それをパズルのような分解組み立て式にしようと言うのだ。
なぜか、というとまた色々な理由やコンセプトがあると思われるが今は聞き流し、仕事に集中したいと思う。
14か所ある接合部分のうち組木になっているのは4か所。それ以外の方が多い。さらに座板と背板の固定はオリジナルのアングル金物とは別の方法を考えなければならず、作る側としては考えなければならないそれ以外の仕事の方が多いからだ。
シルエットはほとんど変えずに、工程におけるオリジナルの合理性を、技術を持った人間でしか作れない特殊性に置き換えることだと作る立場から見ればそう思え、いくばくかの罪悪感も感じたりする。
しかしこれは仕事だ。やるからには彼を超える心構えで立ち向かわなくては。ちょっと大げさかな。
名もない木工家の仕事はオリジナルの3分の1以下。誰かに数字になおされる前に、先に言ってしまえ。