勝利はマシンを超えたところにある
2013 年 4 月 22 日 by SIGN
厚みの次は幅の加工をする。これもまた今日一日延々こればっか。工場の中は縦引きの切りくずと粉じんでマスクなしでは息もできない状態だった。
幅が広くて長い部材が多いため昇降盤や自動鉋盤が通せず、丸のこと手押し鉋盤を使い加工する。電動工具を使い体を動かしてする作業のほうが安心感があるのはなぜだろう。疲れなければこれをずっとやっていてもいい気がする。しかし、このやり方で精度を出そうとするとそれなりの技術と集中力が必要で、どんどん刃口に顔が近付き猫背の前のめりになり気が付くと腰が痛くなっていた。
ふとマスクの中で息が荒くなっているのに気付き、もうあと数枚で休憩しようかと思っていた時に来客があった。うちの近所で最近工場を開いた新人木工家のシロオカ君だった。
この春まで訓練校で学んでいた彼がうちに訪ねてきたのは去年のこと。まだ学生ではあったが将来のことを考えて色々情報収集しているころだった。就職するか迷っていた彼が、卒業後すぐに独立し勢いで工場や設備までそろえてしまった。けっして僕が誘ったわけではない。うちも厳しい時期だったので大変だという話しかしなかったはずなのに。楽しそうに見えた?まさか。
その彼がうちのすぐ近くに工場を構えたことを知ったのはつい最近のこと。昼休みのバイクの通り道に彼の工場はあった。またえらく近いなあと思ったが。
腰も痛いし休憩だ。コーヒーをいれて話をした。彼の話は質問だらけだった。学校である程度わかったつもりでも実際に仕事となるとわからないことだらけ。僕も経験したことだからその気持ちはよくわかる。焦る気持ちも。だけどそうやってひとつひとつ自分で解決していくことが蓄積され財産となっていくので今は十分苦しめばいい。
技術的な質問に僕なりのテクニックについて話すと目が輝いて、でもそれもいつかは自分なりに答えが出るはず。本当に悩むべきはそんなところじゃないよ。「近くにきて良かったあ」って言うけど今度はバイクの話しかしないぞ。彼は昔日本GP250クラスで走ってたそうなので、僕にとってはライディングの相談相手ができたと思っているんだから。
あ、そういえばこないだのMotoGPアメリカズのレースでホンダのマルケスがスペンサーの最年少優勝者記録を塗り替えたね。30年間破られなかった金字塔がついに20歳の若者に。彼の時代がくるのかなあ。
だんだんと バイク好きの木工やさんが 當麻にあつまってきて
もうじき バイククラブができるのとちがいますか?
そして バイク型の家具が 當麻で有名になったりして。
シロオカ君と バイク型の家具 ぜひ 作ってください。
シロオカ君と一緒はないですよ。同じことをやっているようで同じことができないのがこの仕事です。
だからこそそれぞれの価値があるんだと思います。
冷たい言い方かもしれませんが僕が何をしようと彼には関係のないことなんです。
同業者としては僕からは学ばないほうがいいとも思います。もっと成功している人はほかにもっと、奈良にもたくさんいますから。
これは趣味でも副業でもない。職業としてまず成り立たなければそれが一番かっこ悪いと思います。
僕が考えているバイク型の家具はバイクの形はしていませんよ。常にその要素を意識するようなことです。