昨日の話から一転、材はウォルナットになった。
いつもお世話になっている材木屋さんが問屋さんまで現物を見に行ってくれて「噂ほど悪くはないけどどうする?」と今朝電話があった。
図面も書き直し材積もひろい直した後だったが、このベッドがウォルナットでできている姿を一瞬想像すると気持ちが傾き、賭けてみようと思った。
数秒後、「お願いします」と言っていた。金額的にも自分を追いつめているのはわかっている。もちろんお客さんのためでもあるが、理由を付けて納得しようとしている自分に気付いていないわけではなかった。歳をとると妥協を許すスイッチが軽くなる。昨日「すべてがあるべき姿におさまっていく」なんて言ったから、神様がおいちょっと待てと用意してくれたのかもしれない。「俺のせいにすんなよ」って。
ただ自分の目で見てみなければ本当にそれで良かったかはわからない。作ってみなければそれを見ることもできない。そういう仕事なんだ。それをするためにはまず材料を注文しなければならない。
届いた材料はたしかに、さほど悪くはなかった。しかし、選べるほどの量もなく差もなく、かといって金額的に多めにとることもできなかった。すでにこのベッドの材積分でも一件の量としてはありえない量なのだ。
ウォルナット材の特徴として節が出やすくまたその節によって木目が大きく流れて変形し、加工の際信じられないほど反ることもある。それらの材にはところどころ大きな節があった。
加工後は安定する材と言われるが、切れ目を入れるごとに変形する性質に泣かされたこともある。だけど、積み上げられたこの灰色がかった茶色を目の前にすると燃えるぜ。