仕上げのワックス塗装を終え明日の発送まで乾燥する。
意外な注文だったけどなんだか楽しかった。この小ささゆえにスピード感もあって、本当のサイズの椅子がこれくらいのペースで作れたら商売だって成り立つのになあと思ったり。
最近はとくに形を作ることに迷いがなくなってきた。うまくなったとは言えないが早くはなったと思う。
思えば師匠はそれがとても早かった。持ちうる道具を駆使し、そんな使い方ができるのかと感心させられた。
それはもちろん取り扱い説明書には載っていないし、木工の手引書にもないような独自の方法もあった。
多分今の僕と同じように、ここをこうしたいという時に道具を選び加工法を工夫しているうちに身についたことなんだろう。
誰かにこうしなさいとか、調べてスマートな方法を試すとかではなく、自分がやりやすいとか気持ちいいかという基準で選ぶ。それは決して効率が良かったり精度が高かったりするものではない。ただ自分の頭の中での解決が早いだけで、質を上げるにはやはり自分の手の熟練度を上げるしかないという潔さみたいなもの。
どちらがいい悪いということではない。むしろ独自の方法は間違っている可能性だってあるし、何らかの理由でそれができなくなったら代替案を一から考えなくてはならない。しかし、「その先にあるもの」と考えたら可能性はきっと独自の方法にこそあるんだと思う。方法による結果の違いを認めるなら、人と違うから良いという評価を求める世界において、方法の選択は自分の内面に向かっていなければならないと思うから。
わからなければ「外に目を向けよ」という教育を僕は受けてきた。それではうまく立ち回れない性格や生き方もあると身を以て知った。
ただ、結果が同じであった場合にどう判断すればいいのか。それを恐れなければならない。