誰の真似をしてるのか
2013 年 2 月 12 日 by SIGN
写真館に納めるスツールの座板を加工している。例によってヤスリでごりごりと。
材はタモの柾目だから立体的に削ってもきれいな縞模様になる。
手作業で削る贅沢さはあるけど、やはり時間と筋力のいる仕事だ。師匠なら機械を使えと言うだろうか。サンダーでぶわーっといけえ、とか。まあやっちゃいたい気持ちはあるけど、曲面にも動的なものと静的なものがある気がして、くらげスツールならぶわーっといくところだがここは静かにいきたい。
仕上がりでどこまで違いが出るかは出来上がってみないとわからない。
今回のスツールは最近のSIGNの家具の傾向でもある部材の造形で見せるタイプだと言えるかもしれない。
そんなにたいしたことをしているわけではないが、スタンダードな接合と構造で作り上げる職人的な仕事ではないということ。
今はそういう作り方を自然に選んでいるようだし、そのほうがのめりこめるということに気付きはじめた。
使う人が分解までして部材の造形を楽しむことなんてありえない。強度や耐久性を考えればスタンダードに勝るものはないだろう。またシンプルでリーズナブルを求める時代性にももう少し歩調を合わせた方が商売としてもいいはずで、どこを切っても僕の作る家具が誰かに勝っている気がしない。
その家具と向き合うことに集中したいので、ジグや型板を作ることにも時間を割くことがためらわれ、板一枚一枚に墨付けをする。もう一度同じものを作ることなど考えないようになってきた。
しかしいつかは、たったひとつの家具を、それしか作らないような家具屋になりたいとも思うんだ。