僕らが子どもの頃に作られ与えられ
2012 年 5 月 16 日 by SIGN
教員時代の教え子が訪ねてくる日と、「最後の木工教室」の日の間に1日隙間ができたので、以前知り合いから頼まれていた子ども用のライティングデスクの修繕をすることにした。
サイズからしてミニチュアなことと、これを依頼したのが僕と同い年の男性で彼が子どもの頃使っていたということだから勝手に子ども用だと解釈したが、大人が文机として床置きで使うこともできるかもしれない。
汚れを洗いながら、また分解できるところはそれをしながら、この家具を作った人に思いをめぐらせる。
職人が作ったにしては仕事が荒く、しかし加工に使われた道具を考えても、場所によって変えてある材質の選択を見ても、まったく知識のないものではない。
見た目にすごく古そうではあるけど、ベニヤ板やラワン材が多く使われていることからも、作られたのは多分40〜50年前。こういう製品が出回っていた時期があるのか、それとも当時なら手先の器用なおじいちゃんが孫のために作ったか、とも考えられる。
そんな時代もあった。僕らが子どもだったころを思い返してみながら。
日用品には今ほど製品のクオリティーは求められず、ライン生産の工業製品と、このライティングデスクのような手の跡が残る仕事が混在していた。
工業製品の高効率化と品質向上とともに消えていく手仕事の多くは、大量生産にはり合って逆に質を落としていったんだと、この時期の家具を見ると思う。残ったものは、効率が悪くても品質を維持し手仕事の特質を生かしたもの。
そんな時代を見てきた僕らは、はたしてそのどちらの流れにいるのだろう。
これを作ったのが彼のおじいちゃんなら、孫は今大出世してますよ、と伝えよう。もちろん向上していく本流のなかで戦ってますよと。