お料理用ですがアートです
2011 年 10 月 21 日 by SIGN
全部で29本のヘラの柄を削り終えた。
自分に課した課題はすべて違うということ。
基本のデザインだけスケッチして決めて、型板もゲージも作らずフリーハンドで成形し、実際に触れて確かめながら微調整の加工をした。
これだけの数を作るとだんだん形状による性格が分かってきた。
もちろん人によって手の大きさや指の長さも違うし、数値的な寸法を変える事はそれに合わせることだと最初は思っていた。しかし、各断面の径や曲面のアールによって、そのヘラの用途すら方向付けてしまうような感触の違いが生じる事に気が付いた。
工業デザインを勉強すれば理論としてあることなのかもしれないが、僕が大学で学生に教えていることと同じように、僕はそれを足の裏から感じてしまった。
あるものは力を込めた作業に向いており、あるものは繊細な作業に向いている。
一時期流行った人の手が握る形にえぐったようなデザインではなく、断面の形状は円でありシンプルなテーパーの棒である。
関数に表せばきっと前者よりずっと簡単な数式になるだろうその形状に、人の手はより多くの情報を読み取ることができ、感じるのだからすごい。
人に寄り添うデザインとは、まず人間のデザインを知る事だと誰かが言った。