板はぎの待ち時間を使って、ふたつの鉋盤の刃を交換するつもりが、予想以上に時間がかかってしまった。
作業を進めたい気持ちに反してこういうことをしなければならない。なかなか読めない。木工における技術とは、木を加工する技術ではなく機械や道具を操る事を指すのだと思う。それにはもちろん、道具のメンテナンスも含まれる。それができるかできないか、さらに精密な調整ができるかによって、仕事の質も変わってくる。
そしてプロとしてそれをできる限り自分でやる必要もある。
機械であれば、その仕組みを知る事で応用の幅が広がるし、トラブルの際、原因を理解すれば自分で対処できるかそうでないかの判断につながる。
この鉋盤においても、理屈で言えば、回転ドラムにセットする3本の刃をセッティングゲージを使って同じ高さにするということなのだが、機械に癖があったり、固定ボルトの締め付ける順番や強さによって誤差が出たり、なかなか思うようにいかない。0.1ミリの誤差で、大きく仕上がりに差が出てしまう。
また、木工におけるほとんどの道具類はそれほど精密に作られてはおらず、使っていく中で自分で調整し、消耗してはメンテナンスしながら癖を理解し技術によって精度を出せるようになるという、有機的ともいえる使い方を必要とする物が多い。特に日本人が作る道具には。
ギタリストが右手の爪を研ぐのと同じ。どんなに良い道具を揃えようとも、自分の右手は手首につながっている。
何度も刃を交換し、癖を理解しているつもりでも、早く作業を進めたいという焦りもあってか、この機械たちはなかなか僕が言うことを聞いてくれない。