はじめてカホンをつくったときのこと
2006 年 7 月 22 日 by SIGN
僕がはじめてカホンを目の前で見たのは、10年近く前になるでしょうか、和歌山のバグ-スでのライブイベントで、確か「風の楽団」か「天空オーケストラ」のどちらかの演奏で、パーカッションの人が叩いてたのを見た時でした。
マイクは通していたものの、その音には驚きました。どこにもドラムセットはないのに、聞こえてくるスネアとバスドラの音。見ると端のほうで箱に跨がって叩いている人がいて、どうもその手の動きとリズムが合っているのです。
昔から民族楽器が好きだったので、あれがカホンであるということはなんとなく分かったのですが、音を実際に聞くのは初めてだったし、まずあの音が出てくる構造が想像できませんでした。そのころは僕はまだ木工とは別の仕事をしていて、まさかその道へ進むことなど考えてもいなかったのです。また、自分でカホンを作ることになるとは思いもしませんでした。
その後いろいろあって僕は家具の師匠と出会い、弟子入りして修行をすることになりました。当然そのころは頭の中は家具の事ばかりです。
短期間で技術を習得させ、卒業させるのを方針としている師匠でしたから、よけいなことなど考えていられません。その期間内で、僕は一通りの事をやり尽くそうと必死でした。
その卒業間近に、一門と師匠の知り合いのいろんなジャンルのアーティストが集まって、大きなグループ展が開かれました。修行中の僕もはしっこの方に作品を展示させてもらえることになり、修行中の余った材料で作品を作りました。
そのとき、僕は修行の流れで、タイムトライアルをしよう、と考えたのです。そしてなぜか、作るものとして選んだのが小さな子供用のミニカホンだったのです。
作り方は何も知りませんから想像です。余ってた材料ですから、なんのこだわりもありません。そのときはなんと厚さ30mmの杉板でボディーを作り、トップは2.5mmのシナベニアでした。響き線もどうなっているのか知りませんでしたから、ステンレスの番線でスプリングを作り、トップの裏に接着しました。サウンドホールは円ではなくスリット。そんな構造ですが、意外といい音が出て驚いたような気がします。
そのときの僕の目的はタイムトライアル。その結果は、ボディーは30分で一個作り、全部で9個仕上げまで完成させるのに2日でできました。意外と早くできてグループ展までの時間が余ったので、さらに同じ材料でイージーチェアまで作りました。
写真を見ていただくとおわかりのとおり、もうそのときにSIGNカホン-miniの原形はできてたんですね。
なんとこれはすべて完売しましたが、音質は今とはくらべものになりません。いい音がするスイートスポットが非常に狭く、ほかのところを叩くとべんべんという安っぽい音がしてました。
しかし、もし、SIGNカホンがもっと有名になったら。こいつはビンテージSIGNカホンとしてプレミアがつくかも。
いや、そんなことはないでしょうけどね。