ギャラリー展示台
W1100×D450×H950(最大)
W380×D450×H590(最小)
10台スタッキング 専用台車付き
材質:タモ、タモ集成材、アジャスタ
塗装:柿渋、ワックス
ストーリー
ホームページを見たと言って、ある女性から問い合わせの電話がかかってきた。
東京都目黒区の自由が丘にあるギャラリーの方からだった。
新しくオープンするギャラリーの作品展示台を作って欲しいという。
もちろん仕事だから受けるつもりでいたが、なんでうちに?
東京にはもちろん家具屋なんていくらでもあるだろうし、関東近辺なら、奈良までいかなくとも別注家具をやってるところは、それこそ数えきれないほどあるはずだ。
インターネットの効果なのか、東京ではそれが当たり前なのか。距離なんて関係ない時代なのかな。
そうはいっても、数ある中から僕が選ばれたのだから、いつもどうりやるだけだ。
注文は作品展示台10台。
使用しない時はコンパクトに収納できるように。
最初、折り畳み式でできるかということだったが、ギャラリーの設計士が考えたアイデアで、大きさを変え、重ねられるのがいいということになり、その方向でデザインすることにした。
しかし、この構造では横の荷重に弱くなるので、接合部分には必要以上の補強が必要。
天板は反りや伸縮のことを考えて、集成材を使用した。
そして問題は色だった。
向こうから送られてきた色見本は、カラーオイルにはない色だった。
オイルステインや石油系ならよくある色だが、なぜか天然系の塗料にはない。
しかし、茶色、といえば必ずよくいわれるのが、もう少し赤みを。
この色ってなんなのか。日本人が一番好みそうな赤茶色。
調べてみてわかったのが、柿渋だった。日本の伝統的な木部保護塗料。
防腐防虫防水効果があり、この色だった。
日本人の記憶に刷り込まれたこの色は、カキシブカラーだったのだ。
白壁とこの色をあたりまえのように使っている建築屋さんは、分かっているのだろうか。
僕はもちろん本物を使うつもりだった。天然系の塗料であることは間違いない。
そして、使ってみて僕はその性能の素晴らしさを再認識したのだ。
手間はかかるし、臭いもひどい。
せっかく磨いた木もケバケバになるし。
それでもそれ以上に発見したいいところは、ほかのどの塗料にもないものだった。色だけじゃない、使われ続けてきた意味がある。日本人の知恵に感動させられたわけである。
ギャラリーへは直接納品した。
自然光が印象的なガラス張りのギャラリーで、紫外線に反応する柿渋は、次第にその色を増し、展示される作品を引き立ててくれることを願う。
遠方でも、僕に頼んでよかったと、ギャラリーのオーナーはメールをくれた。
作品に人柄がにじみ出ているといって。
アートギャラリー&ショップ・キアン
東京都目黒区自由が丘1-3-21