つたい歩きのローテーブル
W1730×D510×H300
材質:ヒバ、パイン(脚)
塗装:天然オイル、ワックス
ストーリー
子どもが生まれてはじめて意識して手に触れる家具とはなんだろう。
赤ん坊のころは自分の手が思うように動かず、それが自分の手であることさえ、まだわからないのかもしれない。
SIGNではいつも、記憶に残る触感を意識している。
それが丸いのか尖っているのか、硬いのか柔らかいのか、温かいのか冷たいのか、つるつるなのかすべすべなのか。
それらは、樹種や加工法によって変わってくる。
それを強く意識していきたいと考えているのだ。
塗装法もまた重要で、どんなに素晴らしい家具を木で作ったとしても、合成樹脂の塗膜で包んでしまっては、その手触りはプラスティックと同じ。
木製家具を作って売っている以上、木そのものに触れて欲しいし、その良さを知って欲しい、そう思う。
もちろん、それによって生じるリスクもある。
傷はつきやすく、汚れやすい。
しかし、どちらのほうが家具としての寿命が長いのか。
天然塗料で塗装され、何十年も使い込まれた家具の風格を御存じだろうか。
子どもがいろんなものに手を伸ばすようになり、つかまり立ちする頃、その手に触れるものを大切にしたい。
つかまりやすい高さと形状。
そのままつたって歩いていけるよう、ゆるやかにカーブし、もちろん手触りにもこだわったローテーブル。
一人で歩けるようになる頃には、食事やお絵書きにも使って欲しい。
テーブルとは、四つ足で、四角くて、樹脂合板で出来ていて、その上にビニールのテーブルクロスやマットが被せてあるもの。
という認識が植え付けられる前に。
材は国産のヒバを使った。
後から師匠に言われて分かったのだが、節がなく、こんなに目の詰まったヒバの一枚板は非常に貴重なのだそうだ。
樹齢は300年を越えている。
そんなことも知らず、いや、
知らなかったからこそここまで大胆に使えたのかもしれない。
仕上げはとにかくオイルで磨き込んだ。
ヒバは磨くと信じられないほど滑らかになる。
これに触れた人は、まず驚きの声を上げた。
このひんやりとしたすべすべ感は他の木にはない独特のものなのだ。
しかしひとつ悔やまれるのが脚をパインにしてしまったところ。
これはいずれ和桜か樺に変えよう。