杉の子ども用ロッキングチェア
W450×D470×H410 SH235
材質:吉野杉パネル
塗装:天然オイル、ワックス
ストーリー
奈良の吉野にある知り合いの材木屋さんが、オリジナル商品として作っている吉野杉のパネル材。これを使って幼稚園に子ども用のベンチを何度か納めたことがあった。
その材木屋さんに、これで何か定番ものの家具ができたらいいですねと前から話をしていたが、話だけでとくにそれに時間を費やすことはなかった。
この椅子を作るきっかけとなったのは、僕の家具の師匠が主催で毎年開かれるイベント、プロップスフェスティバルでの出品作品を制作している時、急ぎの仕事が入ったりして時間が取られ、制作時間が残すところあと1日、1日で作れるものを考えようということからだった。
修業時代、一日で何ができるか、というトライアルをしたことがあった。その時もそういえば杉のパネルで椅子を作ったっけ。発想力は成長してないな。
だけどあのときは直線的なデザインで加工を省略し、しかも一脚だけだった。今回は2脚作れたし、デザインも曲線を使った型板から作ってるし、接合方法は簡略だがすべて角度がついた組み方なので、レベルとしては上がってるよな。
そういうことにしとこう。
パネル材を使ったデザインで注意しなければならないのは、どうやって面の構成で塊感を出すかというところ。
ついつい平面の構成や箱になってしまいがちなところを、角度や曲線を使ってみる。
もちろん今回は子ども用の椅子ということだったし、柔らかいイメージは取り入れたかった。そして座る楽しさも。と考えて朝からスケッチを始めて、ロッキングチェアにしようと思った。子ども用の椅子ってよくあるけど、結局用途が座卓やローテーブル用の食事もしくは作業椅子でしかなく、なにかもっと子どもたちがくつろげて、魅力に感じるものがないかと思ったのだ。そこで自分専用のテレビを見るための椅子ってどうだろうと。
テレビ、映画、といえばアニメ、と次に出て来たのが「崖の上のポニョ」、そう今回のモチーフとなったのはポニョなのだ。(ジブリさんすみません!)
そこからはほんとにさくさくとデザインが決まり、角度やRも決まって午前中には型板を作って木取りまでできていた。いつもデザインに時間がかかってしまう僕にしては奇跡のようだ。
家具の製作というのはやはり経験がものをいう。杉パネルの扱い方や、幼稚園のベンチの経験がなかったらこの椅子はなかっただろう。考え抜いて作ったものはいつか必ず生きてくると信じて、今度はもっとすごいものを1日で。